◆本当はね、 ページ12
氷の上に描かれる軌跡を眺めるのが好きだ。
柔らかなラインや、力強いカーブ、コンパスで引いたような正確な円。
リンクに刻まれる模様は、その選手の個性を表現している。
今日は、朝からアイスショーのリハーサル。
会場内には見慣れた顔触れがあって、賑やかな声が響いていた。
昨年は新型ウイルスの感染拡大でアイスショーは軒並み中止。
当たり前の日常が当たり前じゃなくなった世界の中、変わらないみんなの姿を見るだけで嬉しい。
軽快なダンスナンバーが流れ始めて、全員で振付の練習が始まる。
今回、ショーのチケットは争奪戦だったとスタッフから聞いた。
その要因となった人は、今、リンクの上でみんなの先頭を滑っている。
氷上に、もっとも華麗な軌跡を描くスケーター。
出演するメンバーのほとんどが年下になる彼は、柔らかな笑顔を湛えて、後輩たちに優しく指導しているけど―――
私と目が合うと、スッと笑みを消して顔をそむけた。
「まさか、また羽生さんと喧嘩してんの？」
「またって、言う？」
背後から聞こえた声に、私は振り返らず答える。
「この前も口喧嘩したって、愚痴ってたやん」
「だって……」
「今回の原因はなに？」
周りの人を憚って、小声で聞いてくる一希は横目でちらっと私を見る。
原因なんて大袈裟なものじゃない。
昨日、他の出演者たちより一日早めに横浜入りした私たちは、ホテルの部屋でまったりゲームをしていた。
手加減してもらっても、負けてばかりの私を結弦さんがあまりに笑うから、ついムッとして……つまんないことで突っかかって険悪なムードになった。
ゲームでもスケートでも彼にまったく歯が立たないのは、いつものことなのに。
いい大人がなにやってんだって話。
「しかし、いい度胸やね。羽生さんに喧嘩売るとかありえんわ」
「………、……」
私も、そう思う。
頭の回転が早く弁が立つ上に理詰めで話を進めてくる結弦さんに口で勝てるはずなくて、ぐうの音が出ないほど毎回言い負かされてる。
「早く仲直りしなよ」
「……うん」
後輩の女子スケーターと楽しそうに話をしている結弦さんが視界に入り、私は面白くない気分で氷を蹴った。
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エミル(プロフ) - くっきーさん» 短編、楽しみにしてもらえて嬉しいです！GIFT、想像をはるかに超えたショーでした。ハマりすぎて更新が滞っていますが、しばしお待ちくださいね。 (2023年3月2日 21時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
くっきー(プロフ) - やっぱりエミルさんの短編すごく素敵です！泣GIFT大成功でしたね！！これからの展開楽しみです、、 (2023年3月2日 1時) (レス) id: 95130b7885 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 璃子さん» 似通った話になりがちなので、新鮮と言ってもらえて嬉しいです(*´ω｀*)ファン目線だと羽生さんのそばにいられるだけで幸せ。でも、実際に彼女になる方は大変だし我慢することも多いんだろうなって想像します。本当に幸せになって欲しいと私も思います。 (2022年4月10日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
璃子(プロフ) - なんだか新鮮なお話でした。楽しく読ませて頂きました。実際お付き合いするとなったら…やはり今回の羽生さんのようにお相手を気遣って「俺といて楽しい？」とか気にしそうですよね。何にせよ幸せになって頂きたい方です。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page23 id: a68a41f56a (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、ほっこりしていただき、ありがとうございます(*^-^*)長編がアレなので、素直な二人にしました。幸せな羽生さん、増やしたい！会見は、羽生さんらしい世界観でした。 (2022年2月14日 21時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年2月12日 22時
