意地悪な偶然−４ ページ9
＜Yuzuru Side＞
ホテルの一室で行われた雑誌のインタビュー。
内容は今シーズンの注目選手やフィギュアスケートの採点問題について俺の見解を聞きたいというのが事前の説明だったのに、実際は俺自身の今後の身の振り方やプライベートに関することがほとんどだった。
だまし討ちされたようで気分は害したが、顔には出さない。
マスコミのこういうズルいところは慣れっこだ。
残念ながら、将来は未定だし、プライベートについては現役の頃と同様、秘密主義を徹底して通すつもりだから、たいした記事にならないだろ。
「え、ファンの人たちが？」
インタビューを終えて帰り支度をしていると、慌てた様子で部屋に入って来たスタッフの人に耳打ちされる。
「どこからか情報が漏れたみたいで、ロビーに集まっています」
マジかー。
SNSで拡散される前に退散しないと。
困った顔を隠そうともしないスタッフは眉尻を下げている。
「どうされますか？ 従業員用の裏口にお車をまわしましょうか？」
「んー……」
俺は顎に人差し指を当てて、宙に視線を浮かべて思案する。
「いや、ロビーから出ます」
俺がいつ出たのかわからないのでは、集まった人たちがなかなか立ち去らないだろう。ホテル側に迷惑かけられない。
それに地元の人たちに対してこそこそするのも嫌だった。
「え、よろしいんですか？」
スタッフが驚いた声を上げる。
周囲にいたインタビュアーや出版社の人たちも片づけの手を止めて、俺を見ていた。
「帰る姿を見せたほうがみんな納得するでしょう。申し訳ありませんが、安全だけ確保してもらえますか？」
「もちろんです。警備員とスタッフで準備をしますので、少しお待ちください」
「お願いします」
スタッフの人に誘導されて、螺旋階段の上に立つと―――ロビーは歓声に包まれた。
「……引退されたのに、凄まじい人気ですね」
隣りでスタッフが感嘆の声をこぼす。
ありがたいけど、これでは無関係のお客さんに迷惑かけてしまうな。
俺は、ロビーにいる人たちに向かって、自分の唇の前に人差し指を立てると、片目をつぶって見せる。
すると、俺の意図を察してくれたのか、歓声が静まった。
「さすが、羽生さん。……行きましょうか」
「はい」
螺旋階段を一段ずつ降りながら、俺は集まってくれている人たちに手を振る。吹き抜けの螺旋階段からだとロビーの向こうまで遠く見渡すことができた。
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にき(プロフ) - ヒロイン思わせぶりすぎる笑熱愛報道出ても好きな相手のこと信じてやれって！笑 (2022年12月20日 2時) (
レス) @page37 id: ab0684a449 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - ほびまほぷさん» ほびまほぷさん、コメントありがとうございます。ここまですれ違うかなーと思いながら書いていました(^_^;)更新楽しみにしてくださるとのこと、今後も頑張ります！ (2022年2月10日 9時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
ほびまほぷ(プロフ) - 2人がすれ違いすぎてめちゃくちゃ泣けました、、更新楽しみにしてます！ (2022年2月10日 0時) (レス) @page45 id: ab6c13b289 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 凛音さん» 凛音さん、コメントありがとうございます。もちろん、最後はハッピーエンド……のつもりです！ (2022年2月6日 19時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - 2人が結ばれますように…！！！ (2022年2月6日 4時) (レス) @page44 id: f2426a3f71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2022年1月14日 14時
