恋人役−５ ページ5
「うん、そっか。突飛な話だと思うよね。ちゃんと恋愛をして相手を見つけることが一番だとわかってはいるけど、今はスケートのことで頭がいっぱいでその余裕がない。少なくとも現役を引退するまで誰かと恋愛って俺の中ではないから」
特に次のシーズンは自分の夢を叶えるための正念場だと考えている、と羽生さんは言う。
「次のシーズンって……北京オリンピック？」
「うーん、周りは三連覇って騒いでいるけど、ちょっと違う。クワドアクセルって、わかるかな？」
「……トリプルアクセルなら知っています。真央ちゃんが跳んでるジャンプですよね」
「そうそう、それ。クワドはその上の四回転半ジャンプ。まだ誰も成功していないジャンプで、子どもの頃からの俺の夢。どうしても次のシーズンで成功させたくて。だから、そのために懸念事項は取り除いておきたいんだ」
でも、自分のスケートのせいで姉がこれまで犠牲になってきた部分があるから、姉には幸せになってもらいたい。恋人役を立てるというのは、考えた末の苦肉の策だという。
「話はわかりましたけど……」
運ばれてきたお造りの盛り合わせに目を奪われつつ、私は次の言葉を探した。
お姉さんとその婚約者を安心させるには、恋人と同棲という形で家を出るのがベストなのだろう。家事や料理の細かい注文も、アスリートとしての彼のお世話をすることを考えれば、納得はできる。
だけど、それを自分が担うか？ といったら、まったく別の話。
「不躾だけど、花沢さん、仕事がなくなって大変だって佳菜から聞いた」
「……お恥ずかしながら、そのとおりです」
「今はコロナで不景気だからね。正直、お金の話ってしにくいんだけど、少なくとも生活の面では不自由はさせないつもりでいる」
「……、……羽生さんは、私を相手として話を進めようと考えているんですか？」
羽生さんの前向きな口ぶりに、私はびっくりする。
「うん。佳菜から花沢さんは口の堅い信用のできる子だって聞いているから。実は一番そこが重要なんだよね」
確かに有名人なだけに、ペラペラと暴露されてしまっては困るだろう。特に羽生さんには熱心なファンがいるし、これまで特定のスキャンダルも耳にしたことがない。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
