恋人役−３ ページ3
三日後、私は佳菜子に指定された場所へ向かったのだけど……。
広々とした敷地に日本庭園、中庭では優雅に錦鯉が泳いでいて、どこからどう見ても、老舗の高級料亭だ。
事前にネットで調べておいてよかったと、一応手持ちの洋服の中でも高めのワンピースを着てきたことに安堵の息をつく。安月給の私には縁のない場所だけど、今日は相手の奢りだというから、それだけでも来る価値はあった。
お店に入る前に佳菜子から『先に待ってるよー』とLINEをもらっていたので、少し緊張しつつ、仲居さんに案内されるまま長い廊下をついて行く。
「失礼いたします。花沢様をお連れしました」
仲居さんが両手をかけて障子を開ける。
個室の中は座敷ではなくテーブル席で「正座じゃなくてよかった」とまっさきに思う。と、同時に佳菜子と目が合い、次にその隣の人物に視線をうつして―――
私は、息を止めた。
淡い照明の下、スッと立ち上がった男性。
陶器のように滑らかな白い肌に、目を瞠るほどの小顔、スラリとした手足。
私の記憶違いでなければ、この人は―――
「初めまして、羽生結弦です」
そう、たぶん。
フィギュアスケートの羽生選手。
「おーい、A―。戻っておいでー」
目の前で佳菜子に手のひらを振られて、私はハッとする。
「あ、失礼しました。―――初めまして、花沢Aです」
とりあえず、落ち着こう。うん。
ここで、羽生選手だ！ なんて、騒いでしまうのは社会人として礼儀に反する。あくまでも冷静に、冷静に……。
ぎこちない動作で椅子に座った私は、頭の中と目の前の情報を懸命に整理する。
私の幼馴染は、そういえばソチオリンピックにも出場したフィギュアスケーターだった。彼女との会話で羽生選手の名前が出てきたことも何度かあったっけ。
だから、佳菜子の男友達として羽生選手が登場してもおかしくはない。
……おかしく、ない？
いやいや、おかしいでしょ！ どう考えても。
フィギュアスケートに詳しくない私だって、知ってる。
オリンピック二連覇とか、男子史上初のスーパースラム達成とか、最年少での国民栄誉賞とか……輝かしい経歴の数々。絶対王者って呼ばれていて、海外まで追っかけて行く熱心なファンがいる。
あの羽生選手が目の前にいるなんて、にわかに信じられない。
相手が有名人だと知っていたら断っていたのに……。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
