Eccentric blue

恋人役−２ ページ2

「それは、女に興味がない的な？」

今どきめずらしい話でもないし、偏見もない。理由としては妥当かなと思っただけ。

「あー、やっぱ、疑っちゃうよねー」

佳菜子がさもおもしろそうに笑う。


彼女曰く、お姉さんの彼氏も疑っているらしく、世間一般的に硬派な職業である彼氏が結婚に躊躇する訳の一つでもあるらしい。

「でも、違うから！ ただ、仕事に熱心すぎて、今は誰とも付き合う気がないみたい」

「ふーん。で、恋人役を務めたらバイト代でもくれるってこと？」

「お姉さんの彼氏を安心させるためにも、男友達は実家を出て同棲を視野に入れてるんだって。そうなれば、少なくとも家賃は浮くでしょ。お金は持ってるから、食費も出してくれると思う」

どう？ と、佳菜子は私を窺ってくるけど……。いくらお金に困ってるとはいえ、見知らぬ男と同棲するほど無鉄砲でもなければ、安売りもしたくない。


「ともかく、会ってみるだけ会ってよ」

私の断る雰囲気を察した佳菜子は身を乗り出してくる。

「モテるんなら、私じゃなくてもいいんじゃない？」

「今は仕事が一番だから、恋愛感情持たれるのは面倒らしいよ」

「……私が好きになったらどうするの？」

「ない！ それはない！！」

佳菜子は力いっぱい断言する。

「Aのタイプとは真逆だもん、そいつ。その点以外も彼が求める理想の恋人役にAはぴったりなんだよね」


家事全般が上手で、特に料理については味はもちろん栄養バランスも考えたものが作れる。車の免許を持っていて、性格は目立つのが嫌いで、インドア。

―――そして、自分に惚れない相手。


「Aは栄養学科出てるし、味は最高。家事もバッチリでしょ。運転も得意。それに男友達は喘息持ちなんだけど、亜也香ちゃんの世話でその処置にも慣れてる」

亜也香というのは、私の三つ下の妹で、幼い頃から喘息を患っていた。半年前に結婚して、今は京都に住んでいる。


それにしても……。
やたら細かい条件をつけてくる、自惚れの強そうなハードワークで病弱な男、か。

想像しただけでもこの話を断るには十分だけど、ちょっと興味はある。

「まぁ、会うぐらいなら……いいかな」

どうせ、仕事もなくて暇だし。

「ホント！？ じゃ、さっそく連絡しておくね！」

いそいそとスマホをいじりだした佳菜子、せっかちなところは変わらない。


　
　
　

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