ギャップ−７ ページ17
＜Yuzuru Side＞
一段のお重の蓋を開けると、和食を中心としたおかずが少しずつ詰めてあった。鮭の塩焼きやゆで鶏のおかか和え、たけのこ煮、豚肉の味噌漬け、小松菜のおひたし、そして定番の卵焼き。
彩りも綺麗だし、量も少食の自分にちょうどいい。
「……どう、かな？」
心配そうなAさんの瞳が俺を見つめている。
「ん、美味しいよ」
お世辞じゃなく、あの食い意地が張っている佳菜がベタ褒めするはずだと、納得していた。
「よかった」
えくぼを見せて、口角をキュッと上げて笑う。
じんわりと胸に幸せが広がる。
食に興味の薄い俺でも、美味しいものを食べたら幸せになるんだな。
食べ終えるとAさんがお重や紙皿を片付けるのを待ってから、俺はようやく本題に入る。
「それで、この先のことなんだけど」
「……あ、えっと」
「仙台へ出て来てくれたってことは、引き受けてくれるつもりなんだよね？」
迷いだしそうなAさんの雰囲気に、俺が畳みかけるように言うと、
「……う、うん」
どこか観念したような顔つきで、うなづく。
ちょっと強引に持っていったかなと、罪悪感が掠めるけど。お弁当を作ってくれたり、わざわざ仙台まで来たってことは、Aさんの気持ちはOKに傾いていたはず。
「じゃ、明日、うちに挨拶に来て」
「―――え、明日！？ 無理だよ！ 無理！」
Aさんがぶんぶんと首を振る。
「なんで？」
「なんでって、そのつもりじゃなかったから、かしこまった服は持って来てないし、手土産だって準備してない」
「いいよ、かしこまってなくて。手土産はそこらへんで買えばいいじゃん」
すると、Aさんはすっと真顔になって、ふーっと息をついた。
「……あのね、結弦くん。事実はどうあれ、結弦くんのご家族は恋人だと思って私に会うんだよ？ 騙すだけでも後ろめたいのに、さらに適当な態度をとるなんてできない。結弦くん、そのつもりで私を呼んだのなら、どうして前もって言ってくれなかったの？」
「………………」
冷静だけど、きっぱりとした口調で返されて、俺は黙ってしまった。
そのとおりだ。Aさんの言っていることは正しい。
勝手に計画を立てて、突っ走ったのは俺だ。
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エミル(プロフ) - MERさん» MERさん、ご指摘ありがとうございます。気を付けます (2021年7月14日 23時) (
レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
MER - 所々美百合さんになってますよ (2021年7月14日 22時) (レス) id: 39acd1ff39 (このIDを非表示/違反報告)
エミル(プロフ) - 鹿さん» 鹿さん、初めまして。コメントありがとうございます。わくわくするって感想、とても嬉しいです♪羽生さん、大人っぽいですかね？今後も楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2021年7月12日 20時) (レス) id: 68edaa3183 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - はじめまして！斬新な設定にわくわくしています＾＾ここの羽生さんはとても大人っぽいですね。大人な羽生さん大好きなので、嬉しいです！更新頑張ってください！ (2021年7月12日 16時) (レス) id: ac41a7df10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エミル | 作成日時：2021年7月10日 18時
