6人に愛されてみませんか？【短編集】 (ページ8)

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橙side

今日は視聴覚室での授業。
この間入れた手紙はただの暇つぶしで冗談半分だった。どうせ誰も見つけていないだろうと机に手を突っ込んだら、小さな紙が指にふれた。

その紙を出してみると、女の子っぽい小さなメモ帳。
誰かが返事を書いてくれたんだ。
今日は少し気になる映像の回だったけどそんなことは忘れて俺はその手紙を読んだ。

その手紙は字が上手くて、文章も丁寧で手紙から人柄がわかるくらい素敵だった。

自分のメモ帳は生憎持っていなかったため、配られたプリントを少し破って、シャーペンを探すのが面倒だったため、机に出していた赤ペンで文章を紡いだ。

返事ありがとう!俺、2-Aの福本大晴!軽音部でベースやってるで〜!君の名前は?もしかして同い年やったりするんかな

なんかちょっとチャラいかな？
女の子へのメッセージでこんなに考えることになるとは…
こんなことこじけんとか誠也くんに言ったらめちゃくちゃ笑われてんねやろなぁ

今度誠也くんにアドバイス貰いに行こうかな…

Aside

「てことがあって…」
福本くんとお手紙でやり取りをしていることを、親友で女の子みたいな男の子のりゅちぇに相談していた。

あれから、視聴覚室で映像を見る授業の度にお話をしていた。お互いの名前、部活、趣味、家族や友人のこと。名前もクラスも知っているのに、なぜか会わなかったのはきっとお互いのイメージを壊したくなかったから。

私たちはこれでいいと思っていたのに、

「ええ！なんで会わんの！大晴知り合いやし」
「りゅちぇ福本くんと繋がってたの！？」
「学校一のインフルエンサー舐めんな」
「さすがりゅちぇ…」

「お互いのイメージ壊したくないとか言ってるけど、それ甘えやからね？それって自分守ってるだけやん」
「勇気出して会いに行き！」
りゅちぇは私を思いっきり福本くんのクラスの方へ押した。

「ほら！こっちみんで！行き！」
「は、はいぃ…」

福本くんと初めて会う、それだけで手汗が止まらなかった。