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名取母「颯馬。」
優しい温かい声が名取に聞こえた。
名取「母さん…!」
久しぶりの再会に名取は笑みを浮かべる。
名取母「久しぶり。元気にしていた?」
名取「うん。母さんこそ。元気だった?」
名取は母親が好きだった。
病院が千葉にあった関係でなかなか帰ってこない父親と違って、母は常に新潟にいた。
なぜ新潟に住んでいるのかそれほど疑問も感じず、名取は幸せに過ごしていた。
名取母「…耕作君が記憶戻したんだって?お父さんから聞いたわ。」
名取「うん。耕くんもこの病院に…」
名取は笑顔で母親を見て、固まった。
今まで見たことのない冷たい顔をしていた。
名取母「耕作君って本当にかわいそうよね。こんな馬鹿息子のために人生の半分も無駄にして。怪我をさせられあげくには思い出させられる。」
名取「…母さん?」
あの事故の後、虚無状態だった名取を新潟から千葉に引っ越させ、新しい生活を押し進めたのは名取の母だった。
名取のためにやってくれていた…と名取は思っていた。
名取母「…あんた、まだ赳留のこと知らないの?まったく、お父さん何やってるのかしら。」
名取「…たける?」
名取の母親は馬鹿にしたように名取を見る。
名取母「名取赳留。あんたの兄よ。」
名取「兄…?」
初めて聞かされる兄の存在。
名取母「赳留はね、体が弱くて新潟の田舎の空気が澄んでいるところで生活した方がいいって言われたから、私と赳留で引っ越したの。そこで赳留が出会ったのが耕作君よ。」
名取は母親を見る。
名取母「赳留はほとんどの時間を病院で過ごしていたわ。それでも勉強熱心だった。将来はお医者さんになって自分みたいに病気で苦しんでいる子を助けるんだってね。」
名取の母親は名取が知らない顔をしていた。
名取母「そんな赳留の親友は耕作君だった。家が近いこともあって、よく病院に顔を出してくれてた。5歳の誕生日の時ね、何が欲しいかって聞いたら兄弟が欲しいって言われた。…だからあんたがいるのよ。」
知らない情報が名取の頭を駆け巡って名取はパンクしそうになっていた。
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ゆうな(プロフ) - お疲れ様です!次も名取先生と藍沢先生がいいです! 次回作も楽しみにしています!! (2020年5月6日 19時) (レス) id: c082026e13 (このIDを非表示/違反報告)
いちご(プロフ) - 完結おめでとうございます!私は有岡くんが好きで、特にやまありのコンビが好きなので有岡くんと山田くんのお話を読みたいです!次回作も楽しみです!頑張ってください! (2020年5月4日 21時) (レス) id: a2aa76141e (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 完結お疲れ様です! すごく面白かったです!次の作品も楽しみにしてます!! (2020年5月4日 21時) (レス) id: d0d29c6b68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:EMI | 作成日時:2020年4月27日 18時