【第1話】 遥かなる願い ページ5
7月。フェローが来てから3ヶ月がたった。
七夕の短冊。
子供の頃は素直に願い事を書いた。
けれど、大人になると書かなくなる。
なぜだろう。
どんなに願ったところで叶わないことがあると知ってしまったからだろうか。
藤川｢三井先生が今週で辞める？｣
白石｢私もさっき聞いたの。灰谷君、レボア用意してくれる？｣
灰谷｢はい！｣
威勢よく答えたものの、灰谷はレボアの場所を曖昧にしか覚えていない。
藤川｢あ、そこで携帯いじっている君。次からこのメモを書いてね。｣
藤川はそう言って患者情報の書かれているホワイトボードを名取に見せる。
名取｢あー、それですね。分かりました。｣
そう答えたものの、また視線はスマホに落ちる。
藤川は仕方なく処置に向かう準備をする。
しかし前方から勢いよく看護師が突進してくる。
藤川｢あぶなっ｣
雪村｢レベル1、用意してあります。開胸セットは来てからでいいですか？藤川先生。｣
藤川｢ありがとう。｣
藤川は雪村の圧に押されながら少し挙動不審に答える。
�塋�｢すみませーん｣
遅れてきたのにやはり髪の毛をいじりながら入ってきた。
�塋�｢もう戻るんですか？やっぱりヘリって速い！｣
藤川｢速いよ。だから君も早く来て準備しようね。｣
�塋�｢はい！｣
藤川は注意したつもりだったが、�塋�は全く気づかない。
藤川は白石に近づく。
藤川｢おまえが一番よく分かってんだろ？今のこのやばい状況。｣
白石｢分かってる。｣
しかしプライベートなことだと言われて、白石はなんとも言えない。
藤川｢緋山が戻るって聞いて、ちょっとは楽できると思ってたのに。ってかさ、橘先生は俺たちに死ねって言ってんの？｣
そう、この人手不足の救命に周産期医療の勉強を中断してまで緋山が戻ってきてくれることになったのだ。
三井先生に頭を下げられてはどうしようもない。
白石｢何か事情があるのよ。｣
藤川｢お前は橘に何も言えねぇからな。しょうがない、俺がビシッと言ってやるよ。｣
橘｢おはよう。｣
その瞬間入ってきた橘に藤川の威勢はすっ飛んでいき
藤川｢おはようございます。｣
そう返す藤川を白石は冷たい目で返した。
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作者名：EMI | 作成日時：2020年4月11日 13時
