耕くんへ (ページ33)

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藍沢は天野の部屋を訪れた。

いつもの笑顔はなく、苦しそうな表情をみせながら、藍沢を嬉しそうに出迎えた。

藍沢｢…君は強いな。｣

天野｢…え？なんで？｣

藍沢｢…そこまで体調が悪かったら一刻も早く手術をしてくれ、というのが普通だ。それだけ、ピアノが好きなんだな。｣

藍沢はゆっくり天野に近づく。

藍沢｢…手術をすれば、後遺症が残る可能性は0じゃない。でも、もしそうなったら、リハビリをすればいい。｣

天野はゆっくり藍沢を見る。

藍沢｢…リハビリはつらい。時間もかかる。でも、君なら。きっと乗り越えて、今と同じくらい大好きなピアノが弾けるようになると、俺は思う。…君はとても強い。｣

そう言って藍沢は微笑む。

藍沢｢…だから大丈夫だ。｣

天野｢…久しぶりに見た。藍沢先生が笑ったの。なんか…大丈夫な、気がしてきた。…先生の笑った顔を見たら。｣

天野は名取の顔を思い浮かべる。

天野｢私、手術受けるよ。｣

藍沢｢…それは、名取の影響か？｣

天野は驚く。

天野｢なに…盗み聞きしてたの…？｣

藍沢｢…聞いてはない。｣

そう言うと天野は微笑む。

天野｢名取先生の影響も大きいけど…決めたのは藍沢先生の影響だよ。｣

藍沢は目線をそらす。

天野｢…でも、一つだけ条件がある。｣

そう言うと天野は藍沢を見る。

天野｢先生が…手術して…。｣

藍沢｢…約束する。｣