繋がれた先 ページ9
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──騒ぎから、数刻後。
「だから、彼は炭治郎の遺言をわざわざ届けてくれただけであって、別に私が無体を働かれたとか、そういう訳ではないんです」
「ハイ」
「彼が帯刀していたのも、この世の悪を滅するため。決していたいけな婦女を脅すためではありません」
「ハイ」
「先生もお年ですし、これ以上はお身体に障ると思うのであまり話を長引かせることはしませんが──」
「と言ってももう
「何か?」
「何でもないですっ!」
「宜しい。とにかくちゃんと反省してくださいね。お話は以上です」
そう締めくくれば、先生はほっと溜息を吐いた。
「Aちゃん、お説教が上手くなったねぇ……」
「ありがとうございます? ああ、あと一つだけ」
「まだあるのかい!?」
……そんなに身構えないでほしい。別に追加のお説教をしようという訳じゃないのだから。
「……ありがとうございました」
「え?」
「ありがとうございました。私が傷付けられたと思って、怒ってくれたんですよね。先生だけじゃなくて、町の人、皆……」
ひどい騒ぎだった。彼には本当に、最後にすごい迷惑をかけてしまったと思う。中には包丁を持ち出している人なんかも居て、彼が無事逃げ切ったとの知らせを聞いた時、どんなに安堵したことか。
本当に申し訳ないと思って──同時に、泣きたくなる程嬉しかった。
「……ねえ、Aちゃん。良かったら、僕の孫にならないかい?」
私は驚いて顔を上げる。先生は、引退して、隣町の息子夫婦の所へ世話になるのだと言っていた。孫、というのは、やはり。
私を、引き取るということ……?
「竈門家の墓を作って。財産も整理して。それから、初めの方は僕の弟子として、一緒に生活しよう。僕の孫になってくれるのは、僕の家族を気に入ってくれてからでいい」
そっと、手が握られる。少しカサついた、皺のある手。少し冷たかったけれど、不思議と、じわりと熱が伝わっていくようだった。
「君の
君の本当の家族の代わりに。
そう言われて、すぐ返事を返すことは出来なかった。だって、私の家族は母さんたちだけで、それに先生たちの負担にもなる。そう考えて、考えて──……
カラン、と。
耳飾りが、揺れて。
──幸せになった時に返してくれ。
約束が、脳裏をかすめて。
だから。
「私で、よければ」
そう呟いて、少しカサついたその手を握り返した。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時