竈門家長女は帰りたい【鬼滅の刃】

竈門家長女は帰れない ページ44

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──幸せになってほしい。



それは、炭治郎との約束だ。最愛の弟の、最期の願い。


自分自身に言い聞かせるように、繰り返し、繰り返し、あの日の光景を思い出す。


家族も、約束も、仲間も、何一つ守れなかった私だけど。



(これだけは──……守らなくちゃ)



だって、私は、お姉ちゃんなんだから。





＊＊＊




──カナエさんが死んでから、半年が過ぎた。



怪我の療養が終わって任務の復帰を許された私は、そのまま蝶屋敷に寄り付かなくなった。

怪我をしたら藤の家紋の家で診てもらって、回復したらまた鬼殺の任務に明け暮れる。そんな日々を繰り返して、私の階級はいつのまにか上がっていた。



いつか、しのぶさんが言っていたことだけど。私はどうやら、成長速度が異常に早いらしい。



一度見たものは忘れないこの能力に関係あるのか、鬼との戦闘経験が増えるつれ行動の予測が当たりやすくなって。


痕跡も見つけやすくなって、今ではもう鬼の探索に時間を取られることも少なくなった。


思い出が増えるのが嫌で、また失う苦しみを味わうのが怖くて、人と関わることはめっきり減ってしまったけれど。



(……でも、大丈夫だよね。だって、今だけだもの。沢山の人を鬼から守って、守れなかった分を取り戻して、そしたら──…………あれ？)



──その先を思い描くことが出来ずに、内心首を傾げる。



(おかしいな、前はどんなことを考えてたんだっけ。……ああそうだ。全部終わったら、家に帰ろうと、そう思って──……帰る(・・)？)



……どこに？ 誰かに問いかけられた気がした。



生まれ育った家も、先生たちが受け入れてくれた家も、どちらも人が住めるような状態ではなくなっている。片方は住人の血が飛び散って、もう片方は氷となって取り壊された。


「おかえり」と言ってくれる人も、もうこの世にはいないのに。





(──……私の居場所(いえ)は、もうどこにもないのに)





どこに帰れるというのだろう。誰が受け入れてくれるというのだろう。








──もう、誰かの死に涙を流すことすら出来ない。








こんな私を、誰が──…………









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