理解不能 ページ28
*しのぶさん視点です。
──誰も、何も言えなかった。
あの子の言葉に、その笑みに。
何も、誰も、言えなかった。
***
その時私は、飛びかかりそうになる体を姉さんに取り押さえられながら、あの子の声を聞いていて。
「話をしませんか、奥さま」
どうして、そんなことが言えるの。
「貴女と色々話したいんです」
どうして、そんな優しい瞳で笑えるの。
(…………なんで、)
……どうして
「先ずはあの子の名前から。教えてください、奥さま」
──そんなに
***
……不思議だった。姉さんも、あの子も。
鬼に家族を殺されたんだって言ったじゃない。会ったばかりの頃、確かに貴女は鬼を憎んでいたじゃない。
なのに、なんで、どうして?
(“鬼にされたこと”に同情してるの? でも、確かにあの鬼は赤子だったけど、それでも人を殺していたのよ? 己の食欲を満たすために、人を喰らっていたの)
その女もそう。子を育てるためとかふざけた理由をつけて、薬か何かで動けなくさせた人を地下に放り込んでいた。
そんな奴らに、どうして同情できるの? 可哀想って思えるの? どうしてそんな、諭すような優しい声で話せるの? どうして。
「ちがっ、私はただ!」
貴女もよ。どうして取り乱してるの? 最後までおかしいままでいなさいよ。どうして今更罪悪感とか感じてるの? その涙は、何のため?
改心なんてやめてよ。どうして、どうして、どうして!!
「“神さま”についての情報……教えてもらえますね?」
姉さんが私から離れて、座り込んだ彼女に近付く。彼女は、あの子にしたように姉さんを睨みつけることはなかった。嗚咽混じりに聞こえる声を、姉さんは彼女を宥めながら拾っていた。
「……どうしてよ……」
そこそこ広い地下室に、私の呟きがこぼれ落ちる。誰にも拾われることはなく、宙に溶けて消えていく。
それが、完全に消えてしまう前に。
カラン、と。
「しのぶさんっ!」
──私を呼ぶ声が、聞こえた。
*大正コソコソ噂噺(という名のあとがき)
筆者は、意外とタイトルとか凝ってるらしいですよ? 勿論テキトーなのもあるんですけど、例えば胡蝶蘭とセージの花言葉とか。気付いてもらえたら(作者が)嬉しいなーってのがいくつか。
以上です! 読んで頂きありがとうございました!
323人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時