訪問者 ページ3
.
「お前が、竈門Aか」
──Aちゃんを探している人が居る。そう言われて彼に会ったのは、炭を売りに炭治郎と一緒に町まで下りた、その翌日のことだった。
***
「朝からすまないねぇ、Aちゃん。昨日も遅くまで調合を手伝ってもらったのに……」
「気にしないで下さい、先生。私は炭治郎たちのお姉ちゃんなので、これくらいへっちゃらです」
「……竈門家にも悪いことをしたね。こんなに頼りになるお姉さんを数日借りることになってしまって。Aちゃんも、寂しいだろう?」
そう言って先生は申し訳なさそうに笑う。けれど、本当に気にすることないのに。父さんが良くお世話になったお医者様に恩返ししたいと思うのは当然で、引退すると言った彼に手伝いを申し出たのも私の方なのだから。
炭治郎は流石に帰るよう言ったから、確かに昨晩、布団が妙に広くて寒いな、と思ったりもしたけれど。でも、
「大丈夫ですよ、先生。私、
カラン、と耳飾りを揺らせば、今でも鮮明にあの約束の記憶が蘇る。
「ああ、炭治郎君とお揃いのやつだね」
「お揃いというか、元々対なんですけどね。私が結婚したら返すっていう約束なんです。離れていても、この耳飾りとその約束が、私と家族を繋いでくれているんです」
だから、本当に大丈夫なんですと私は笑って、町の人たちに届ける薬の入った鞄を手に取る。そして扉へ向かおうとすれば、外から声が掛けられた。
「Aちゃーん。お客さんが来てるよー? なんかずっと探してたみたいー」
「はーい! 今行きます!」
……反射でそう答えてしまったけれど、“お客さん”とは誰だろう?
私は先生と顔を見合わせて首を傾げた。
(この町の人で、私も知っている人なら、“お客さん”なんて呼び方はしないよね。ちゃんと名前で呼ぶ筈)
いくら考えても答えは出ないままだったが、あまりその人を待たせるのも悪いので、鞄を持った手の反対の手で扉を開ける。
「お待たせしまし、た……?」
「お前が、竈門Aか」
そこにいたのは、半半羽織が特徴的な男性だ。年齢としては、私より四つか五つは上だろう。
その薄い唇から紡がれる声は、随分と淡々としていて。
「お前が、竈門Aか」
その人は、私の左耳に揺れる耳飾りを見て同じ言葉を繰り返す。
その時──カラン、と。
風に揺られた耳飾りの音が、何故かよく響いた気がした。
323人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時