神霊の宿る魂 ページ13
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「え、Aちゃん──?」
自分の身体の状態も、側で見ている筈の信乃さんの存在すら意識の外にあった。
──ヒノカミ神楽、壱の型。
ただ、記憶の中の父さんの声と、揺れる耳飾りの音だけが聞こえていて。
────
竜巻のごとく、祭具を回転させる。風が巻き起こり、炎の文字が刻まれた面がふわりと浮いた。
(これだ……! こうやって舞うんだ……)
その時初めて、私は父さんの動きと、自分の動きが重なったのが理解った。
***
「す──、すごいすごい、Aちゃんすごいよ! どうしたの?! 今の動き、すごかったよ! 感動しちゃった!」
信乃さんの声と、耳元で揺れる耳飾りの音で意識を取り戻す。
「あ……、し、しのさん、信乃さんっ!」
私はお腹の子に障らないように、彼女に飛びつくように抱きついた。
「出来ました! 私舞えましたよ信乃さん!」
「舞えたね、Aちゃん! 綺麗だったよ〜」
今までは、記憶の中の父さんの動きを真似してるだけだったけど。でも今は、重なる感覚がした。
「身体が冷えてもいけないので、信乃さんはもう中に戻っていてください! 私、もうちょっと練習してます!」
温石を拵えて厚着をさせてると言っても、用心するに越したことはない。私は信乃さんが家に入ったのを確認してから、再び祭具を握り直して構えた。
「よし、もう一度!!」
***
「っは、ハァ、っ、」
いつのまにか雪が降り始めていたことにも気付かずふと顔を上げてみれば、もうすっかり日も暮れていた。
本来なら身を切るような寒さと表現するべきなのに、ずっと舞い続けていた所為で火照った身体は、もっと寒くてもいいくらいだ、と文句を言っている。
「あ、Aちゃん。丁度呼びに来たんだよ。晩ご飯が出来たから……と言っても、先にお風呂だね」
汗で全身が汚れている私を見て、先生は苦笑いをして言った。
「随分熱中してたみたいだねぇ」
「はい! 練習してるうちに、色々思い出して。呼吸もコツを掴めてきた気がします。結局、神楽が上手くいったのは一回だけなんですけど」
でも、この呼吸と体力の向上訓練を同時に行えれば、多少余裕を持ってヒノカミ神楽を踊れる。
私が舞う神楽は、稚児が生まれた翌日の夜を予定している。見立てでは、来月の中頃だ。
(それまでに、沢山頑張らないと)
私は気合を入れ直した。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時