検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:370,241 hit

叶わない約束 ページ2

.



昔、すぐ下の弟と妹と、約束をしたことがある。父さんが死んでから、三日目の夜のことだった。



***



その時、私は森の中で一人で泣いてた。見つけてくれたのは鼻の良い炭治郎と禰豆子の二人で、心配した、と怒りながら、痛い位の力で私を抱きしめた。



『一人で泣かないで』



二人はそんなことを言っていた。無理だよ、と私は答えた。


私はお姉ちゃんで。だから、他の弟妹よりも、それこそ母さんよりも、誰よりも早く前を向かなければいけなくて。


だから、昼間、目を真っ赤にして泣く皆を慰める為に、こうして夜に泣いていたのに。今泣かなければ、それが出来なくなってしまう。そしたら、私は、どうすればいいのか。皆の“お姉ちゃん”でいる為には、どうしたら。



「……、兄ちゃんと姉ちゃんなら、俺と禰豆子がいる! 姉ちゃんが泣く時に、わざわざ一人になる必要なんてない!!」

「お姉ちゃんが我慢しなくても、私たちを頼ってくれればいいのに! どうして一人で抱え込むの!?」


二人は泣きながら怒っていた。下の子のお世話に慣れてる二人だから、そう言ってくれたんだろう。自分たちにも背負わせろと。耐えるなら一緒だと。
でも、それでも、私は──…………



「それでも、私は、二人にだけは、頼りたくない」



そう言った私に、二人は傷付いた顔をした。そんな顔をさせてしまったことに、罪悪感はあったけれど。それでも、撤回するつもりはなかった。

だって、


「だって──“二人”のお姉ちゃんは、私だけだから」


……私のすぐ下の弟と妹は、二人とも、とてもしっかりしている。我儘も言わず、下の子たちの面倒をよく見て、お母さんを支えている。自慢の弟妹だ。だからこそ、



「私は、いつだって二人を守る側で在りたいの」


莫迦、と言われてしまった。分からず屋、頑固、とも言われてしまった。うん、うん。ごめんね、ごめんなさい。それでもね、私は、“お姉ちゃん”だから。そう、在りたいから。


言葉を重ねた私に、炭治郎は耳飾りを片方くれた。父さんの形見だった。途絶えさせず継承していくようにと、炭治郎が託された筈のもの。私は最初断った。けれど、



「一人にさせたくないんだ」



そう、苦しそうな顔で渡されたから。


嫁に行く時に返してくれと言われた。幸せになった時に返してくれと。



でも。




──耳飾りを返すべき弟が死んだ(いない)なら、あの約束(ゆめ)は、どうやって叶えたらいいのだろうか。

訪問者→←とある少女の噂噺



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (127 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
323人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。