叶わない約束 ページ2
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昔、すぐ下の弟と妹と、約束をしたことがある。父さんが死んでから、三日目の夜のことだった。
***
その時、私は森の中で一人で泣いてた。見つけてくれたのは鼻の良い炭治郎と禰豆子の二人で、心配した、と怒りながら、痛い位の力で私を抱きしめた。
『一人で泣かないで』
二人はそんなことを言っていた。無理だよ、と私は答えた。
私はお姉ちゃんで。だから、他の弟妹よりも、それこそ母さんよりも、誰よりも早く前を向かなければいけなくて。
だから、昼間、目を真っ赤にして泣く皆を慰める為に、こうして夜に泣いていたのに。今泣かなければ、それが出来なくなってしまう。そしたら、私は、どうすればいいのか。皆の“お姉ちゃん”でいる為には、どうしたら。
「……、兄ちゃんと姉ちゃんなら、俺と禰豆子がいる! 姉ちゃんが泣く時に、わざわざ一人になる必要なんてない!!」
「お姉ちゃんが我慢しなくても、私たちを頼ってくれればいいのに! どうして一人で抱え込むの!?」
二人は泣きながら怒っていた。下の子のお世話に慣れてる二人だから、そう言ってくれたんだろう。自分たちにも背負わせろと。耐えるなら一緒だと。
でも、それでも、私は──…………
「それでも、私は、二人にだけは、頼りたくない」
そう言った私に、二人は傷付いた顔をした。そんな顔をさせてしまったことに、罪悪感はあったけれど。それでも、撤回するつもりはなかった。
だって、
「だって──“二人”のお姉ちゃんは、私だけだから」
……私のすぐ下の弟と妹は、二人とも、とてもしっかりしている。我儘も言わず、下の子たちの面倒をよく見て、お母さんを支えている。自慢の弟妹だ。だからこそ、
「私は、いつだって二人を守る側で在りたいの」
莫迦、と言われてしまった。分からず屋、頑固、とも言われてしまった。うん、うん。ごめんね、ごめんなさい。それでもね、私は、“お姉ちゃん”だから。そう、在りたいから。
言葉を重ねた私に、炭治郎は耳飾りを片方くれた。父さんの形見だった。途絶えさせず継承していくようにと、炭治郎が託された筈のもの。私は最初断った。けれど、
「一人にさせたくないんだ」
そう、苦しそうな顔で渡されたから。
嫁に行く時に返してくれと言われた。幸せになった時に返してくれと。
でも。
──耳飾りを返すべき弟が
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時