愛しい子 ページ15
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──曙光が差した。
陽の暖かさを感じた途端、ふっと身体の力が抜けて。
背に伝わる土の感触と、目の前に広がる朝焼けに、ああ、倒れたんだ、と遅れて理解する。
「「Aちゃんっ!!」」
鳴り響く心臓と乱れた呼吸に混じって、駆け寄ってきてくれる先生たちの足音。それと、薄れていく意識の中で、気の所為だろうか。
「しのぶ、見た? あの子の舞い! カナヲにも見せてあげたかったわ!」
「見てたわ姉さん。見事だったわね」
──羽ばたく蝶が、視界をよぎった気がした。
***
「……ん、あれ……?」
「ああ、起きたかい?」
見慣れた天井。使い慣れた布団。清められた体。
どうやら気絶した私は先生の家に運び込まれた後、衣装を脱がされ体を拭かれて、寝かされたようだ。
因みに運び込む以外は全て信乃さんの出産に備えて呼んだ産婆さんがやってくれたらしい。意識が薄れていた状態でも、やはり汗まみれでいるのは気持ち悪かったので、とてもありがたかった。
「赤ちゃんは……。信乃さんも……」
「今はどちらも眠っているよ。様子を見るかい?」
「えっ……はい!」
酷使した身体は疲れ切っていたけれど、それでもしっかり休息を取ったからか、思ったより身体は怠くない。
「是非見たいです!」
ほぼ布団を蹴飛ばすようにして、私は起き上がった。
早く、早く会いたい。
妹だろうか、弟だろうか。
どんな声で、どんな顔で笑うのだろう。
私は貴方を、何て呼べばいい?
逸る気持ちを押さえて、中で寝ているという彼らを起こさないようにそっと襖を開ければ、そばで拓海さんが付き添っているのが見えた。
しー、と囁くように人差し指を口元に立て、反対の手で手招きされる。
「男の子だよ。誠司と名付けたんだ」
「……せい、じ」
拓海さんの手が、そっとその子を撫でる。
まろい頬。ふくふくの紅葉のような手。顔立ちは、全体的に信乃さんに似てる気がした。でも、目元は拓海さん似だ。二人の子だって、すぐ分かる。
「君の、弟だよ」
「──っ、はい……!」
──涙が、溢れて。止まってくれなかった。
愛しい。大切な、私の弟。新しい
舞っている間、この子のことだけを考えていた。元気に育つように、健やかであるように。それだけを、祈って、願って。
──泣きたくなる程愛しい、私の弟。
どうか、幸せであってほしい。私の死んでしまった家族の分まで、どうか。
幸せに。
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ドジ猫(プロフ) - 絵宙(えそら)さん» 一応、炭治郎の髪ってことで炭治郎本人は数に入れてないです! わかりにくくてすみません!汗 (2020年3月30日 6時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
絵宙(えそら) - ページ5の「込められた想い」では、弟の数は、茂、六太、竹雄、炭治郎(漢字が違うかもしれません)で、四人だと思います。細かくてすいません。これからも頑張ってください!楽しく読ませていただいてます! (2020年3月30日 3時) (レス) id: 63faa5bcfc (このIDを非表示/違反報告)
由亜(プロフ) - とっても面白いですね!一気に読んじゃいました。寝転びながら読んでたんで、シーツの一部分になみだのしみが・・・(泣きました)これからlet's続編で御座います!面白い小説を有難う御座いました (2020年2月24日 4時) (レス) id: d2128f7714 (このIDを非表示/違反報告)
タートル(プロフ) - 失礼致します!面白くて一気に読んでしまいました!私も鬼滅のお話を書いているので良かったらお越しください。 (2020年2月19日 20時) (レス) id: 77bb05bd52 (このIDを非表示/違反報告)
ドジ猫(プロフ) - なるは。さん» ありがとうございます!嬉しすぎて顔がにやける……!これからもよろしくお願いします!! (2020年2月16日 22時) (レス) id: a192f6ddb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ドジ猫 | 作成日時:2019年12月19日 0時