たけみちゃんの正体は ページ20
少し申し訳なさそうな顔で
千冬とわたしを交互にじーっと見ると
あっ…と何かを察したのか
意地悪そうにニヤついた顔で
もしかして俺ら邪魔だった?
ちょっとコンビニで時間潰してくるわ!
__行こう、ヒナ__
と、たけみちゃんに向かって声をかけた。
今度はたけみちゃんも
「だからヒナ少し待とうって言ったのに!」
タケミチくんが聞いてくれなかったんじゃん…
なんてふくれっ面を見せる。
ヒナちゃん…
誰?
タケミチくん…?
誰…?
頭の中で矢印が行ったり来たりして
こっちがヒナちゃん
こっちがタケミチくんと理解するまでに
しばらく時間がかかってしまった。
わたしの解釈が合ってるとすれば
タケミチくんとヒナちゃん
確認するように
言い争いをしてる2人に声をかけると
横から千冬が割って入ってくる。
タケミっちとヒナちゃん、会うの初めてだろ?
そんなに緊張すんなよ、なんて言いながら
『こっちのバカっぽい奴が俺の相棒!』
と、タケミチくんの肩をポンっと叩く。
バカっぽい奴だって、とヒナちゃんが笑う。
緊張…
という言葉で表すと違う気がする。
何で先に言ってくれなかったんだ…
なんて千冬に怒鳴ってやろうと思ったけど
よくよく思い返してみたら
わたしが頑として受け入れなかったからだ。
「千冬ぅぅ…ごめん…」
気付いてしまった結果
情けないやら恥ずかしいやら
本当に自分でも嫌になるくらい呆れてしまった。
『何その顔…』
と複雑そうな顔をしている千冬と2人に
「実はね…」
と、ヒナちゃんがタケミチくんだと思ってた事
千冬はヒナちゃんの事が好きなんじゃないか?
って、ずっと思い込んでた事
今までみたいに千冬と友達でいる事もできなくなっちゃうかも…って思ってた事
今考えてみたら自分でもおかしくなっちゃって
全部バカ正直に話してみた。
「俺が…たけみちゃん…?」
当然のように困惑するタケミチくんに
『さすがにたけみちゃんは違和感あるね』
と、ヒナちゃんと千冬は大笑いする。
3人は散々腹を抱えて大笑いしてから
ごめんごめん、笑いすぎた!
と謝ってくれたけど
謝られると逆に恥ずかしくなって
それを隠すように花火に手をつける。
うまく力の入らない手で
なかなか点いてくれないライターをカチカチしてると
ほら、と千冬は手を差し出してくる。
そっとその手に自分の手を重ねると
一瞬だけ目を見開いて
少しだけ照れたような顔をして
そうじゃねーだろ!とまた笑った。
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作者名:ミリカ | 作成日時:2021年10月29日 19時