何度だって 【佐野万次郎】

また始まる ページ25

ありがとう。



言わなくちゃ。
ちゃんとわたしが言わなきゃ。


「わたし、万次郎が好きだよ」


たぶんずっと好きだった…と言いかけた時
万次郎は

『はい。ストップー。』
と両手でわたしの口を塞ぐ。


突然塞がれたものだから
最後はモゴモゴしてただけで
聞こえてなかっただろうけど。

なにすんの！と塞いだ手を退かすと


はぁ、とため息のようなものをついて
１回しか言わないからよく聞いて、と言い
ひょいっとわたしを抱き上げると
座って抱き合う形になる。

いい？と
ギュッとわたしの両手を握りながら
もう今までみたく泣いても俺は何もできない
今までみたいに、うん、うんって
話を聞いてあげる事もできない
大丈夫って言って頭をポンポンする事もできない


『だからもう、終わりにしよう』
と、じっと目を見ながらゆっくりと話す。


『ずーっと俺の隣にいれば、A泣く事もないじゃん？』
とニッコリ笑う。


今までみたいにはいかない。
ケンカしたり言い合いになる事もあると思う。
またすれ違ったりも何度もすると思う。
だけど絶対にどこにも行かない。
何度でもちゃんと繰り返す。
ごめんねって言って、元に戻れる関係がいいんだよね？
と、いつかわたしが万次郎に話した
恋愛観を引っ張り出してくる。



よくそんなの覚えてたな
と思いながらも
わたしも終わりを告げる。


「うん、もう絶対泣かない。約束する。」




万次郎がそばにいてくれるなら
ずっと隣で笑っていてくれるなら。
わたしはもう泣く事はないだろう。


大丈夫。
万次郎なら大丈夫。




『よしっ！終わりっ！』

もう出ないと思ってた涙が何故か溢れてきて
わたしは早々に約束を破ってしまう。

『ちょっ…もーAはすぐ泣くー』

と言いながら万次郎は
頭をポンポンっとすることは無く
今度はギューっと強く抱きしめてくれる。


3年前のあの日と同じ匂いがして
わたしはまた懲りずに恋をする。



冬の大三角形は今日は見えるだろうか？
日付が変わると共に外へ飛び出す。
『誕生日おめでとう』
と差し出された手を繋ぎ
ゆっくりと2人歩きながら
ずっとずっと長い間空を見上げる。


好きだ、なんて1度も言われた事はない。
でもこれでいいんだ。
そんな言葉よりも
もっとずっと大事なものをくれたから。



何度だって繰り返す。
隣に君がいる限り。

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