☆ ページ46
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引越しのこの日に届いたテレビや冷蔵庫の設置が終わってもう夕陽が空をオレンジ色に染め始めた。
「そろそろ帰ろうか？」
隆二がそう声をかけてきて私も頷いた。
「ちょっとトイレ借りる」
隆二がトイレに入った瞬間、隣に座っていた臣に手を握られて私の胸はドクンと音を立てた。
「A、今までありがとな。Aの弁当も飯も美味かった……好きだったよAの味付け」
臣は俯きながら小声で話してくれた。
「私こそ……楽しかった。臣と出会えたこと後悔してないから……今までありがとう」
「もっと早く出会えたら良かったな…俺たち。それだけは後悔してるわ」
ギュッと握られた手をギュッと握り返して私は笑顔を見せた。
「バイバイ、臣」
苦しそうに微笑む臣の手を離して荷物を手に持った。
臣は何か言いかけてたけど私はそれを遮った
さよならを聞いたら泣きそうだったから。
トイレを出た隆二は臣に「じゃあまたね」と声をかけて玄関で靴を履いた。
私も靴を履いてもう一度、臣に「バイバイ」と言って部屋を出る。
エレベーターを待つ間、優しく握ってくれた隆二の手。
私は溢れる涙を止めることが出来なかった。
それを拭ってくれるのも隆二の優しい手。
「俺が居るよ……A」
その言葉がどんな意味を持つのか分からないけど
この手だけは手放しちゃいけないんだと隆二の笑顔が教えてくれている気がした。
ーfinー
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作者名：taka
| 作成日時：2016年1月21日 15時
