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「帰らないの?」








「…………帰る」









いつまでもスタッフルームの椅子から立ち上がらない私に純ちゃんは少し冷めた声をかけてきた。








予定あるって言ってたのに私のせいで遅れたらマズイけど、帰りたくない気持ちで葛藤中。









「私もう行くよ?」








「うん、私も帰るよ」








帰りたくないけど、真っ暗な歯医者に一人はさすがに怖い。









ビルの二階に構える職場から階段を降りて外に出た。古びた重いシャッターを下ろし鍵を閉めてここでお別れだ。









「うわっ!あ、お……どうも」








鞄に鍵を仕舞ってる間に純ちゃんがなにやら一人で何かに驚いていた。








一歩後ろにさがって横に立つ純ちゃんの目線を追えばすぐ、私の心臓は大きく跳ね上がる。








「臣……何してるの?」








「飯行こうかと思って待ってたんだけど」








「そ、そっか」








「じゃあ、私はここで!あ、今度髪カットして下さい!」








「え、もちろん!いつでも来て下さい!」








「じゃーねA!お疲れー」









臣と私にそれぞれ話しかけ帰ってしまった純ちゃんをボーッと眺めていた。









「いつまで見てんだよ、行くぞ。あそこの居酒屋でいいっしょ?」









「う、うん」









臣が顎で指した居酒屋はいつも隆二と行くお店……。ちょっと気まずいけどそこしか無いから仕方ない。








一日中憂鬱だった気分も臣の顔を見たら一瞬で吹き飛んで、ただただ嬉しかった







臣が待っていてくれた事が、こうして臣の隣を歩ける事が、ふたりで居られる事が、飛び跳ねてしまいたいくらい嬉しかった。

☆→←ふたり。



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作者名:taka | 作成日時:2016年1月21日 15時

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