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両手を塞いだ臣を背に部屋の扉を開けて臣に続いて玄関に入った。
残業になると言っていた隆二の靴がなぜか両足とも裏返しになって乱雑に脱がれていた。
どうやったらこんな脱ぎ方出来るんだ?玄関で何を急ぐ必要があるんだろう。
臣が来るまでは私よりも遅く帰った日は必ず小走りで廊下を抜けてキッチンに立つ私を後ろから抱きしめてくれていた。
「ただいまー。はぁーAの匂い落ち着く」
疲れた隆二を癒せるのは私だけだと、私を癒せるのも隆二だけ。幸せを私は毎日感じていた。
そんな事を思い出して、だからこの靴なのかな?と可笑しくなった。
隆二のこういう子供みたいなとこと頼れる大人なとこのギャップを私は好きになったんだ。
リビングに入るとソファで胡座をかいた隆二が背もたれに体を反らせてにっこり笑っている。
「おかえりー!なんだ2人でスーパー行ってたの?」
「たまたま会ったんだよ、な?」
「うん。オカマが急に現れてさー!キモかった!」
「え?オカマ?」
「隆二ビール飲む?」
「そこはオカマになるとこでしょー。分かってないねー臣は」
「うっせ。早く飯作れ!」
出たよ……臣のツン。この人にデレはあるんだろうか?
きっと彼女にしか見せないデレがあるんだろうね。あるんだよね………。
デレな臣も見たいけど、臣ツンでもいい。冷たい口調でもあの目を見ればそこに少しでも優しさを感じるから。
さっきまで隆二との幸せを思い出していたはずなのに、もう私の頭の中は……臣だらけ。
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作者名:taka | 作成日時:2016年1月21日 15時