【ベイブレードバースト 】狂ってしまった時計 the 2nd day【短編集】

16時…裏切りを実感した ページ16

『裏切り』

この言葉を聞いて何を思い浮かべるだろうか。

仲間の裏切り、期待の裏切り、予想の裏切り…まだまだ裏切りには種類があるだろう。

そんな中俺は愛する人の裏切りを実感した。

愛する人に裏切られた。

「そうだよなぁ？A。」

ガタガタと震え、涙をボロボロと零す女、A。

この女はかつて俺が愛した女だ。

「別に付き合ってなどいなかったが俺はお前を愛していたぞ…？お前も何度か"好き"と言ってくれたよな？」

A「そ、れは良いチームメイトとして好きって訳で…！」

は？だったら軽率に好きなんて言うなよ。

ふつふつと目の前の女に怒りが湧いた。

「ほぉ俺が期待していたと…そう言いたいのか。」

自分でも驚く程に低い声が出た。

確かに俺はお前に期待していた、だがこんなに大きい裏切りで返ってくるとは思わなかった。

Aと俺はテーブルを挟んで話している。

正面に相手の顔があると言う状態だ。

「お前は俺を甘くみてたんだ、それが招いた現実だ。」

Aは何も言わずに俯いている。

苦しそうに顔を歪めながら。

「まぁ俺も鬼では無い、てことでAお前に提案だ。」

少しトーンを上げて言ってみるとピクッとAの肩が動いた。

「ここに蝋燭がある、この蝋燭が全て溶けた液体を十杯分…全て腕にかけることが出来たら許してやる。」

そう言って俺は棚から蝋燭十本と十枚の皿を取り出した。

は、と声を漏らすA。

眉間に皺が寄っていく。

A「そんなことしたら火傷するんだよ？」

「だからどうした？」

まるで人間では無いものを見る様なその目が嫌になった。

「で、やるのか、やらないのか？やらなければこのままだが。」

薄暗い中Aが唇を噛み、やるよと言ったのが耳に届いた。

すぐに俺はライターを手に取り蝋燭十本分の火を灯す。

自然に原形を留められなくなった蝋燭を見ているとある言葉を思い出した。

大きな愛情と溶けていく友情。

最後には愛情は消えて友情は形を変えてしまう。

ふと手にした本に書いてあった言葉。

それと共に走馬灯の様に蘇るAとの日々。

一つの喧嘩だけで離れてしまったAの俺への想いはこんなもんなのかと裏切られた気になったんだっけか。

そんな思考に陥りそうになった瞬間完全に溶けた蝋燭を見てハッとする。

じっくり苦しんで自分の罪の重さを知ってもらわなくては…。

一瞬の心の迷いを無かったことにした。

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