九十四個目 ページ47
数日後、合宿に向かう日が来た。三日間という短い期間は、主催側の氷帝学園の都合らしい。授業日数が多いので休み期間が短いんだとか。真面目か。
「全員集合したね？じゃあバスに乗るよ」
「「……」」
全員が全員黙りこくって嫌そうに乗る。それもそのはず、水色に金字ででかでかとATOBEの文字。
仁王が唸っていたのはこのことが原因か。今ならばよくわかる。
しぶしぶバスに乗る。ここから一時間半程度の距離にある場所だそうだ。その間は私は寝るのみ。赤也辺りがうるさかったが、常に睡眠不足の私はしっかり熟睡することができた。
___
姉が熟睡している。俺がこうやって彼女を気にかけたのは決して気になるからとかではなく、まあなんというか驚愕に似た、そんな感情を抱いたからである。
「どーーしたんだよ、A」
「いや……別に」
「なんだよ！！ホントお前俺だけにつめてーよな！」
それはお前が鈍感だからだよ。と思ったけれど口出しはしない。何々それどういう意味？？だとかやかましくしゃべり始めるに違いないから。こいつの扱いはこんなもんで十分である。
それより姉だ。端的に言うと、あいつは警戒心が異常に強い。まず家族でも俺は例外なので省くとして、父親や母親に対してもあまり饒舌なほうではなかった。むしろ無口。いっつも下向いてビクビクビクビク過ごしているので、そこんところものすごく合わなかったのだが。
それが最近、目に見えて変わってきた。
絡む人間が増えたからなのかなんなのか、あいつは前よりまだよく話すようになった。俺が「こいつこんな声だったっけ」となるぐらいの変わりようなので、これは確実。
そして何よりよく笑うようになった。俺は元々こいつの不愛想な性格がすこぶる苦手で、まあそれはあっちも然りなんだろうが。とにかく愛称は最悪だったのだが。最近よく見るそんな表情はわるくないのかもしれな……いや、これじゃあ本格的なシスコンじゃねぇか。気持ち悪い。
頭を振って意識をバス内に戻す。まあそういうことなのだ。こいつが人前で堂々と寝顔さらせるような環境になったテニス部はまあすごいと言えるのだが、俺だって家ですら寝顔なんぞ見たことがない。いやべつにこいつらに見せたくないとか言っている訳じゃないけど。うわ、なんか腹立つ。
(Aの表情が変わってきたとか、よく声を聴くようになったとかいうのは、弟が関心を向けるようになった証拠。)
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暁菓(プロフ) - ノアさん» 有難うございます。なかなか更新できませんでしたが読んでくださる方がいると嬉しいです。頑張ります！ (2016年6月25日 21時) (
レス) id: afef531e42 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 指摘失礼します。八十七話で「饒舌」が「じょぜつ」になっていました。いつも続き楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2016年6月25日 21時) (レス) id: 04e0a71a55 (このIDを非表示/違反報告)
暁菓(プロフ) - 輪廻さん» 閲覧ありがとうございます。励みになります！ (2015年12月5日 21時) (レス) id: efd9df2090 (このIDを非表示/違反報告)
輪廻 - 凄く面白いです、続きが早く読みたいです！更新頑張ってください！応援しています♪ (2015年12月4日 18時) (レス) id: 03478bf9f4 (このIDを非表示/違反報告)
綾乃 - 親のような生温かい目で見てしまいますよねｗｗｗｗｗｗ (2015年11月28日 21時) (レス) id: 24069469b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁菓 | 作成日時：2015年11月19日 18時
