【テニプリ】はいどいて。立海の腐オタクが通ります。2

六十八個目 ページ20

部長様が大体の説明を終え、柳君が流れるような文字でホワイトボードに最後の文字を書いたところで「質問は」と問う。


異論はないと言うように皆が首を振り、私もそれに頷く。


「では、練習を再開する。全国大会まで残り二週間だからね。常に時間が惜しいくらいなんだ」


「うむ。まったくその通りだ。本番まで気を抜くことは許されぬからな」


全員がラケットを片手に立ち、ドアから出ようとする。しかし、そこにいち早く参加したのは意外な人物だった。


「…仁王、めずらしーな」



なんじゃ、別に、と相変わらずの猫背の彼の姿勢の悪さは変わらないが、そのぶっきら棒さに全員が頬を緩める。


素直じゃないにもほどがある、とは思うが。彼は夏休みに入ってからというもの、部活に参加しない時は一度もなかった。むしろ、誰よりも汗を流していたように感じる。全国大会前なのだから当たり前なのかもしれないし、他の部員だってもちろん然りだ。しかし、それなど理由にならないほどに彼は一生懸命だった。マネージャー業をしているからこそ見えるのだ、彼の憤りが。


結局彼は一番初めに部室から出ていき、皆もそれに続く。なんだかんだ仲良すぎだよなぁ、個々の人達は。なんて最後に出ていく弟の背中を見つめる。


あの弟が小走りなりながら練習に向かっていくさまがなんだか異様に微笑ましく思えて、口を押えながら私もコートに急いだ。

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