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六十四個目 ページ16

「先輩先輩!次プリンがいいっす!」


「ぜってー合うに決まってんだろ!そん次生クリームと練乳な。決定」


「赤也、こっちが焦げているぞ」


「ハムチーズのやつってあるか?」


たこ焼きパーティーを初めて早一時間半。大量の素や具材を持て余したこの少年達の囲うテーブルはもはや無法地帯と化していた。


もともと用意されていた具の他に、それぞれが持ち寄ったお菓子やらを突っ込んで行ったらこのざま。もうこれならロシアンルーレットと同じだ。


私はそんな荒れたリビングを横目に、ひとり安全地帯でソファに腰掛けていた。


しばらくすると、そんな私の隣にどすんと誰かが腰掛けた。誰だろう、と頭を上げて目を見開く。


仁王雅治だった。


彼とはあの自己紹介以来一度も話していない。ましてやこんなふうに二人でいることはとても珍しかった。


そんな親しくもない私になんの用だろうとおもうも、彼は無表情を貫くので心情が伺えない。まったく、面倒くさいやつだなと思っていると、彼はその表情のまま私に皿を差し出した。


「たこ焼き。食う?」


自分の手元のそれに目配せして言う。その上には出来立てのたこ焼きが乗っていて、蒸気を吹いていた。


いや、でも。食う?と言われても中身がわからないので怪しいし、この人だからもっと怪しい。確かにたこ焼きは食べたいなと思って見ていたけれど。


『それ、中身なに?』


「ちゃんとタコじゃき。マトモなの」


『……じゃあ、いただきます』



微妙に表情を抜いて言うので、本当だろうとありがたくそれを受け取って口に含む。


こ、れは。



『!!!っ、まっず、え、こ、なにこ、え、なにこれまずい』


一度口の中に入れたものを出すわけにも行かず、明らかにタコではない具の入ったたこ焼きを無理やり飲み込む。


手元にあったオレンジジュースをがぶ飲みし、懸命に息を正す。やっと落ち着いたと思ったら、彼はもう私の隣にはいなくなっていた。


…あいつ、やりやがったな。



未だ謎の後味が残る口が気持ち悪く、やつを睨みつける。振り返った彼はニヒルに笑っていた。

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暁菓(プロフ) - ノアさん» 有難うございます。なかなか更新できませんでしたが読んでくださる方がいると嬉しいです。頑張ります! (2016年6月25日 21時) (レス) id: afef531e42 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 指摘失礼します。八十七話で「饒舌」が「じょぜつ」になっていました。いつも続き楽しみにしています!更新頑張ってください! (2016年6月25日 21時) (レス) id: 04e0a71a55 (このIDを非表示/違反報告)
暁菓(プロフ) - 輪廻さん» 閲覧ありがとうございます。励みになります! (2015年12月5日 21時) (レス) id: efd9df2090 (このIDを非表示/違反報告)
輪廻 - 凄く面白いです、続きが早く読みたいです!更新頑張ってください!応援しています♪ (2015年12月4日 18時) (レス) id: 03478bf9f4 (このIDを非表示/違反報告)
綾乃 - 親のような生温かい目で見てしまいますよねwwwwww (2015年11月28日 21時) (レス) id: 24069469b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁菓 | 作成日時:2015年11月19日 18時

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