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「あ、コネシマさんの幼なじみ」
たちはだかるデカい図体の後輩に、思わず顔を顰めた。
「何か用、鬱くんの二番煎じ」
「うわ、先輩なんてこと言うんですか！酷い！」
なんて嘘泣きするチーノを無視して通り過ぎようとすると、「今暇です？」と声をかけられた。
「何でよ」
「どうせコネシマさん待っとるんでしょ？俺もショッピに用事あって。良かったら一緒に暇つぶしません？」
「まだ終わらんでしょ、あれ」と彼が指さすのはグラウンドのサッカー部。
確かに練習は白熱していて直ぐに終わりそうには無い。
「いつも待ってるんですか？」
「うん。送ってくれるから」
「へぇー。いくら心無いコネシマさんでも彼女には優しいんすねぇ」
「え？」
「へ？」
「付き合ってないよ」
「……いやいやいや、そんな冗談言わんでも」
「マジマジ。ただの幼なじみ」
「えーでもAさんはコネシマさんのこと好きでしょ？」
「うん。でも振られてるから」
「………は？」
うわ、間抜け面。
初めて見るチーノの顔に思わず吹き出す。
「え？それマジで言ってます？」
「うん」
「振ったんすか、コネシマさん」
「うん。そりゃもうばっさり。お前が彼女とか考えられんわーあっはっはーって」
「なのにその距離感？一緒に帰ったり…、この前めっちゃくっついてスマホ見てましたよね」
「うん」
そう言うとチーノは天を仰いで、「ほんま心無いわー」と呟いた。
「……A先輩、それで大丈夫なんですか？」
「んー？全然大丈夫じゃないよ」
本当は距離を置きたいし、優しく名前も呼んで欲しくないし、暗くなるから送ってくなんて言って欲しくないし、不容易に頭撫でたりしないで欲しい。
でもコネシマは、それをやめない。
やめてくれない。
1度だけ、もう一緒にいたくないと言ったことがある。
振られた時点で心はボロボロなのに、コネシマは私を突き放すことなく前と同じように、いや前よりも甘く優しく私に接していた。
辛かった。
だから離れたかった。
それなのに、
「嫌や。俺は絶対離れん」
「私の事振ったのに？」
「付き合うとか、そういうのはあかん。けど離れるのはもっとあかん」
理不尽なそれに抗えるほど、私はコネシマを嫌いになれなかった。
付き合えないけど、離れない。
ずっと、一緒。
あぁ、それでもいいか。
彼から与えられる生ぬるい愛情が段々と心地よくなってしまったのだ。
「……おかしいですよ。コネシマさんもAさんも」
「……分かってるよ、そんなの」
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