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「ごめんなぁ。」
心にもない謝罪を述べながらAの家の郵便受けに思いの丈を綴った手紙を入れる。
投函した手紙はこれで87通目。
毎日郵便受けを覗いては不安そうに瞳を揺らすAが可愛すぎて思わず無音カメラで写真を撮った。
あぁ、可愛い、俺の幼馴染。
最近大学の講義を欠席しているAにある程度出来上がったレポートを渡そうとインターホンを鳴らす。
中から出てきたAの母さんに挨拶をして、暫くすると憔悴しきったAが出てきた。
「あ…ロボロ。中、入っていいよ…。」
周りをきょろきょろしながら部屋に入れてくれるその姿があまりにも可愛すぎて隠しカメラでも仕込んで来ればよかったな、と軽く後悔している。
部屋に入って少しの間沈黙が室内を支配した後、Aがゆっくりと口を開いた。
「あの、ね。もしかしたら気付いてるかもしれないんだけど…最近知らない人から嫌がらせ受けてるの。最初はほんと小っちゃい嫌がらせだったんだけど、どんどん大きくなっていって…今も、これが郵便受けに入ってて…。」
そういって差し出された手紙を受け取る。
中身を見ると思いを拗らせたような心情が最初から最後まで埋め尽くしている気持ちの悪い手紙だった。
…まぁ書いたの俺なんですけど。
「うわ、きっついなこれ。」
とりあえずAに同意する。
「そうだよね、こんな感じの手紙が毎日郵便受けに入ってて…大学に行ってもつけられてるみたいで怖いし…それでね、彼氏と別れたんだ。彼氏は守るからって言ってくれたけど、私と彼が別れればきっと嫌がらせもやむと思うの、だから…。」
なんかごめんね、こんな話しちゃって…。と涙を流しながら謝るAが愛おしくて仕方がない。
あぁなんでこんなに可愛いんやろうな。
Aの震える手をしっかりと握って大丈夫、大丈夫と声をかける。
ここまで来たらボロを出しちゃいけない。
俺はあくまでも『Aのことを大事に思いやる優しい幼馴染』なんやから。
心の底にため込んだ汚い気持ちを知られないように。
同時にAの精神的な支柱をへし折って逃げ場をできる限り減らすように。
「大丈夫、俺はずっとAの味方やから…幼馴染やもん、な？」
だから早く、誰が一番Aのことを思いやれる男か気付いてや？
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