！おさななあまた！ (ページ30)

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「意味わかんないし、無理だよ。私と天乃くんはただの幼馴染でしょ。幼馴染としての好意はあっても異性としての好意はないよ」

今の私にとって天乃くんは幼馴染でしかない。
幼馴染でしかないから"天乃くん"と呼ぶ、決して下の名前で呼ばない。

「今更や言いたいんやろ？やけど、しゃーないやん。あの時のAやったら、俺の為とか言って何でも習ってできるようになってしまったやろ？」

理解しがたい言葉に私は顔を顰めた。
好きな人の為に頑張ることがいけないとでも言うのだろうか？

「俺がおらんでも生きていけるとか最悪やん。何でもできるようになったAが俺に飽きたらおしまいやんけ」

「…何言ってんの？」

「やから、少しずつできんことを増やしていってん。もう分かっとるやろ？誰と付き合うても長続きせん。俺以外となんてそれこそありえんやろ？」

今更頑張ろうとしたところで人間の習慣は戻らんよ、と彼は言った。

「俺やったら今まで通りAのお世話できるんやで？何もできんAを責めんし、呆れん。むしろ、大歓迎や。な？最高やろ？」

目の前の男は本当に私の知る幼馴染なんだろうか？

逃げなきゃと思うのに、誰かに助けを求めなきゃと思うのに。
私の頭が助けを求めようと思い浮かぶ人は、この状況を作り出した彼だった。

「逃げれるわけないやろ、年季がちゃうんやし」

そう言ってにこりと笑う彼は私の両手首を掴む。
それはまるでランプの魔人に付けられた枷のようだった。