灯台もと暗し/tn.zm ページ15
「はぁ〜武宮先輩かっこいい〜」
放課後、トントンの家に集まった幼馴染三人組。突然Aが呟いた言葉に、他二名はピクリと反応する。ゾムは頬を引き攣らせながら、「誰がかっこいいって……？」と信じられないものを見たかのような反応を見せる。対してトントンは、理解が追いつかずに「え？」と繰り返している。
「武宮先輩！優しくて、面白くて、運動できるし、頭良いし！あぁ〜大好きだなぁ。告白したい〜！！」
「やめとけ、屑やぞアイツ」
「A、付き合う男くらいはちゃんとしたの選んだ方がええよ」
「なんでよ！かっこいいじゃん、武宮先輩」
生徒会活動や、その他行事などで武宮と交流のある二人は必死になってAを止める。Aとしては、ただの幼馴染に恋路を邪魔され些か不服そうだ。幼稚園児の頃から家が近く、同じ小学校、中学校に進み、更には高校まで同じ。折角なら三人一緒がいい、とゾムが駄々をこね、満更でもない二人が同じ高校に願書を出した。
「トントンは今度のテストも余裕そうだね」
拗ねたAがアイスティーをストローで吸い上げながら、ジト目で彼を見る。するとさっきまでトントンと一緒になってAを止めていたゾムがAの側についた。
「毎回学年最下位を味わう俺らの気にもなってや」
「俺ら、じゃないよゾム。私は真ん中よりちょっと下だから」
「勉強せんお前らが悪い。分からへん問題あったら聞きに来てええって言うとるやんけ」
「分からない問題が分からないんですぅー！」
「教えてもらったところで応用はできない」
開き直る二人に、トントンは深くため息をつく。そろそろ17時を回る。時計を見ながらAは口を尖らせ、ゾムとトントンの両腕を掴み、引き寄せる。突然のことに対応できなかった二人は、Aにくっ付いてぎゅうぎゅうになる。
「流石に高校卒業後の進路は一緒じゃないもんね……」
「お前らが一生懸命勉強すれば可能性はあるんちゃうか。俺も、受かるか分からへん大学やから。でも受かる為に勉強してる。ここまで来たんやったら、俺もお前らと一緒がええわ」
最後の方は恥ずかしくて、声が小さくなってしまった。それでもA達の耳にはしっかり届いている。ニヤニヤしながらトントンの周りをぐるぐる回り、彼の頬を両端からつつく。
「一緒がええんか〜しゃあない奴やな」
「我儘なんだから〜」
「じゃかあしい！！もう帰れ！」
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