検索窓
今日:3 hit、昨日:17 hit、合計:17,598 hit

ページ43

興奮した様に息を乱す彼を見つめる彼女の瞳に段々と喜びと幸せが滲み出して来た頃、ふっと彼はその表情を悲しそうに、或いはつまらなさそうに染めた。
その様子に彼女は静かに首を傾げる。


「でも残念だ……君は陸の生き物で俺は海の生き物。同じ場所では生きられない。君をどれだけ愛してあげたいと思っても、俺の傍に置いておきたいと思っても叶わない。でも君をこのまま手放したくもない。君が他の誰かのものになるくらいならその骨の一欠片だって残さず喰らってしまいたい。俺は、どうしたらいいんだろう、とっても胸が苦しくて堪らないよ」

『喰らってくれれば良いのです、骨の一欠片も残さずに』


一寸の迷いもなく放たれた言葉に怪物は一瞬息を飲んだ。
また彼は生まれて初めての経験をしたのだ。
生まれて初めて、動揺した。


「…君は、怖くないの?悲しくないの?この世界から消えてしまうことが、俺に食べられちゃうことが」

『ちっとも怖くありません。誰よりも愛しい貴方に食べられるなら、貴方の血となり肉となりその一部になれるのなら。……ただ、一つだけ、我儘を宜しいですか?』

「うん、良いよ。なあに?」

『貴方も私を愛してくれていると言うのなら…愛していると、言って頂けますか?』

「ふふ、なにそれ。そんな簡単な事が我儘?……愛してるよ、とても。こんな気持ち、もう今後二度と訪れる事はないんだろうなって思うほど」


壊れ物に触れるかの様に親指の腹で彼女の頬を撫でる彼に彼女はもう思い残すことはないとばかりに愛らしく幸せそうな笑みを浮かべた。


『ああ、ありがとうございます…!わたし、私もっ、愛しています…!!』

「んふふ、ねえ可愛い君。お名前はなんて言うんだい?」

『A、です』

「A、そうAか。俺はね、実はコンタミって名前があるんだけど、暫く誰にも呼ばれていないんだ。せっかくならAに呼んで欲しいな」

『コンタミ、さま』

「はあい、君のコンタミだよ。ああ、A、俺のA、ずっとずっとあいしてる」


段々と強く締め上げられていく彼女の体はぱき、ぱきと軋みを上げる。
それでも尚幸せそうに熱に浮かされたまま笑みを浮かべる彼女に顔を近付け彼はゆっくりと唇を重ねた。











(…気が変わっちゃったな、やっぱ首だけは残しておきたいかも)
(例え肉が膨れて剥がれて溶けても残った頭蓋にいつでもキス出来るじゃない?)

【ntj】krna.→←◇



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (68 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
177人がお気に入り
設定タグ:unei , wt , ntj/gnki
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

える。(プロフ) - すいみん。さん» こんばんは、える。と申します。すいみん。様の感情を揺さぶる事が出来て、更にはだいすきと言って頂けて感無量でございます。こちらこそありがとうございます!良ければこれからも見守って頂けたら幸いです、コメントありがとうございました! (12月1日 22時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - ドチャクソに大大大好きです。最新話、号泣しました。この小説のコンセプトが好きすぎます……素敵なお話をありがとうございました……😭🙏 (12月1日 14時) (レス) id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:える。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年2月21日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。