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『初めて貴方を見たのは、少し前のこんな満月の晩でした。この入江の近くで仕掛けていた網を引き上げに来た時に、入江から悲鳴が聞こえたのです。噂も当然知っていました、その日が満月の晩だというのを忘れて網を仕掛けてしまったものですから、私は急いで家に帰らなくてはと思ってはいたのです。でもその悲鳴を聞いた時、どうしても好奇心を抑えることが出来ませんでした。私は海の魔物を恐れるのと同時に、一体どんな怪物なのかと、どんな姿をしているのかとずっと知りたかったのです。だって誰一人としてその姿を見た人は居ないのですから。私は入江にこっそり足を踏み入れ物陰に隠れてそっと覗いてみました。……私がずっと一目見たいと願っていた海の魔物は、それこそこの世の者とは思えない程美しかったのです。黒く逞しいこの足で絡めとった男と共に海に沈んでいく貴方の美しい微笑みが忘れられなくて、貴方にこの身を捧げたくて、私はもう一度この入江に足を踏み入れ貴方に会いに来たのです』





『私は、貴方に恋をしてしまったのです』





しん、とまるで時間が止まった様に静寂が流れる。
砂を攫い岩に当たり少しばかりの飛沫を上げる波の音と、ちゃぷちゃぷと可愛らしい水音だけが入江に谺する。




「…ふっ、ふふっ、ふはっはっはっははっ!!!!」


怪物は笑った。
一等愉快だとばかりに、この世の全てが可笑しくて堪らないとばかりに、けらけらという表現がまさしく相応しい上擦った笑い声を一頻り響かせてまだ肩を揺らしながらぐいっと彼女の体を引き寄せその両頬を無遠慮に掴んだ。


「おもしろい、面白いよ君!こんな面白い人間に会ったのは生まれて初めてだ!!ねえ、ねえ君!俺、君に凄く興味がわいちゃった!家畜や愛玩動物に恋焦がれ劣情を抱く狂人にどうやら俺もなっちゃったみたい!はじめて、初めてだよこんな気持ち!だけどきっとこれは、君の言う恋と同じに違いない!やったね、俺達両想いだよおめでとう!!!」

◇→←【unei】cntm.



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える。(プロフ) - すいみん。さん» こんばんは、える。と申します。すいみん。様の感情を揺さぶる事が出来て、更にはだいすきと言って頂けて感無量でございます。こちらこそありがとうございます!良ければこれからも見守って頂けたら幸いです、コメントありがとうございました! (12月1日 22時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - ドチャクソに大大大好きです。最新話、号泣しました。この小説のコンセプトが好きすぎます……素敵なお話をありがとうございました……😭🙏 (12月1日 14時) (レス) id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年2月21日 18時

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