◆ ページ29
『行け、ない』
「は?なんで?こんなにゆっくり帰ってるならバイトもないんでしょ?」
『ない、けど……行けない』
「だからなん、」
『彼女に、悪い』
『だぁの彼女に悪いから、行けない』
さようならあたしの初恋。
さようなら、あたしの愛しい人。
「………は?」
『こないだ仲良さそうに話してたじゃん。彼女めっちゃ可愛いね、大切にしなよ〜?だぁ顔はいいけどその顔面じゃ補えないくらい変人だからね、引かれない様にだけしなー?』
自転車に跨りペダルに足を掛ける。
漕ぎ出して、このまま家に辿り着いたら、もうこんな風に喋れなくなるんだろうな。
寂しいけれど、仕方ない。
伝えられなかったあたしが悪い。
ガシャッ、と自転車の籠を片手で掴まれた。
いや、進めないんですけど。
この地獄の時間をまだ味わえと言うのか、今捨て台詞まで完璧だっただろ。
『なに、』
「違うから!!!!」
キーンと鼓膜が刺激された、こんな至近距離で叫ぶな耳が壊れる。
『うっさ…!』
「あの子彼女じゃないから!サークルの!!後輩!!!」
後輩……こうはい……??
思わずぽかんと口が開いてしまう。
えっ待って待ってじゃああたしあの日から今まで自分の勘違いでずっともやもやしていたという事?
え、しかも本人に言っちゃったって事??
えっえっむりむり恥ずかしい。
段々と顔に熱が集まっていくのが分かる、ペダルから足を下ろして頬に思わず両手を添えた。
というか、
『なん…なんでそんな必死なわけ…?』
「そんなの決まってるだろ。……お前にだけは、勘違いされたくない」
驚いて目を見開く。
心臓が、徐々に早鐘を打ってくる。
うるさい、うるさい、くるしい、口から飛び出してしまいそうだ。
「…来いよ、」
『はっ?』
「ちゃんと話するから……家に、来てよ」
(若干赤くなった顔で真っ直ぐ見つめてくるものだから、頷く事しか出来なかった)
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える。(プロフ) - すいみん。さん» こんばんは、える。と申します。すいみん。様の感情を揺さぶる事が出来て、更にはだいすきと言って頂けて感無量でございます。こちらこそありがとうございます!良ければこれからも見守って頂けたら幸いです、コメントありがとうございました! (12月1日 22時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - ドチャクソに大大大好きです。最新話、号泣しました。この小説のコンセプトが好きすぎます……素敵なお話をありがとうございました……😭🙏 (12月1日 14時) (レス) id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)
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