【実ｼ兄者】焔が二人を灰にする迄。

【gnki】gt. ページ25

泣き虫の話。











『ぐっち、』


ぽろぽろ、ぽろぽろと。


宝石みたいにキラキラ輝く綺麗な瞳から零れては落ちていく涙にごくり、と小さく喉が鳴る。


何時も天使みたいに可愛らしく笑う彼女の表情が、今はこの世の何もかもが辛いとばかりにくしゃりと歪んで。

ざわつく胸も荒立ちそうな息も隠し通して、俺はいつも通りを装い口を開く。


「なにお前、また泣いてんの？」

『ぐっち、ぐっち、わたっ、わたし、』

「今度はなに？」

『ふられ、ふられたの、ずっ、と、すきだった、のに、っ』


ああ、やっとアイツにふられたのか。


すきな奴が出来る度に舌っ足らずにぐっち聞いて、と柔らかそうな頬をぽっと赤くして俺に報告するお前。

ふられる度にくしゃくしゃに泣いて俺に報告するお前。

今回は割かし長かったな、もうすぐ2年だったのに。

こんなに可愛いお前の片想いが今まで一度も実った事がない事案を、お前はそろそろ可笑しいと思うべきだ。
言ってやんねーけど。


俺以外の誰かの為にその綺麗な涙を落としていると考えるだけで反吐が出そうになる。

でもそれより、そんなお前の泣き顔にどろどろと渦巻く劣情を抱えている自分に心底死にたくなる。


泣き虫な彼女は、本当にすぐにぴいぴいと泣く。

野良猫が道端で死んでいても泣くし、丹精込めて育てていた花が寿命を迎えて枯れても泣く。


でも大半を占めるのはすきな奴にふられた時。


惚れっぽい癖に、なんでずっと隣にいる俺には見向きもしないんだろうなこの馬鹿は。

俺はこんなにすきなのに。

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