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【ntj】sni. ページ3

不老不死の話。






この世界はかつて、魔法に溢れていたらしい。


しかし魔法は時に人々に厄災を齎し、やがて世界を壊す程の戦争にまで発展した。


壊れた世界が元に戻った頃には、魔力を持つ人間は全人口の1割にまで減り、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、目立たぬ様に穏やかに暮らしていた。


一人の魔法使いが言った。

魔法を絶やしてはならぬと、種を絶やしてはならぬと。

魔法使いは考えた。

どうしたら魔法を、魔法使いを世に残し続ける事が出来るだろう。

そして魔法使いは導き出した。



──永遠の命があればいい。



魔法使いはまず自分に呪いをかけ、そしてその呪いを伝染病の様にばらまいた。

魔力を持つ者だけがかかる不老不死の呪い、老いる事も死ぬ事もない、永遠を生きる呪い。



僕がその呪いを受けたのは、16になったばかりの頃だった。



若かった僕は、それを自覚した時、それはそれは興奮し母さんに喜びを伝えたものだ。

その時は、母さんがどうして泣いていたのか、父さんがどうして落胆していたのか露ほども分からなかった。


僕がこの呪いに絶望したのは、友が死んだ時。


人間とは呼べない僕を受け入れてくれた仲間達、父と母が居なくなり落ち込む僕を励まし慰めてくれた仲間達、彼らが老いていき恐怖と悲しみに震える僕に生まれ変わったら会いに行ってやるよ!と笑ってくれた仲間達。



本当に独りぼっちになった時、この呪いの恐ろしさが身に沁み心の底から憎んだ。



死にたい、と思った。


長い長い時間をかけて、僕は呪いを解く術を探す為旅をした。


その道中で、生まれ変わった彼らに会えるなんて事はなかった。

魔法は辛うじて存在していても、輪廻転生なんて現実にはきっと存在しない。
夢物語、空想の産物なのだ。



そんな一縷の望みを信じるには、僕はもう永く生き過ぎた。



いっそぜんぶ諦めてしまえたらどんなに楽だろう、生を諦める事も死を受け入れる事も出来ない。
こんなに苦しいだなんて知らなかった、知りたくなかった。



「……しにたい、なあ」


『もし、そこの方』


訪れた街の路地裏で、何もかもに疲れ果て冷たい雨が体を打つ事を気にも留めず座り込んでいた時、彼女は声をかけてきた。


『そのままでは、風邪を引いてしまいますよ』


女神の様な微笑みで、傘を僕に差し出しながら。

◆→←◇



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える。(プロフ) - すいみん。さん» こんばんは、える。と申します。すいみん。様の感情を揺さぶる事が出来て、更にはだいすきと言って頂けて感無量でございます。こちらこそありがとうございます!良ければこれからも見守って頂けたら幸いです、コメントありがとうございました! (12月1日 22時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - ドチャクソに大大大好きです。最新話、号泣しました。この小説のコンセプトが好きすぎます……素敵なお話をありがとうございました……😭🙏 (12月1日 14時) (レス) id: f12e90341c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える。 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年2月21日 18時

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