【実ｼ兄者】焔が二人を灰にする迄。

【wt】kryn. ページ17

鉄仮面を崩したい話。










彼女は理数学科のアンドロイドと呼ばれていた。


表情筋はぴくりとも動かず、感情の起伏も乏しい彼女の笑った顔どころか泣いた顔も怒った顔も、ひいては驚いた顔すら誰も見た事がないのだという。


そんな中、彼女の同期の間である遊びが流行っていた。



──アンドロイドの鉄仮面をなんとしてでも剥がしてやろう。



その遊びは彼女の知らない所で、彼女が知る事もないまま内密に極秘に繰り広げられるはずだった。


彼があっさり口にしてしまうまでは。


『何それ、くだらない遊びね』

「全くだよなあ」


彼──同期からきりやんという愛称で呼ばれる彼は、この大学に入学してからの彼女の唯一の友人である。

人付き合いがてんで苦手な彼女は彼とも仲良くなるつもりは毛頭なかったが、何故か懐かれてしまいなんだかんだと今に至る。


「しかも今更それが流行るってなに？俺は１回生の頃からずっと挑戦してんだけどって感じ」

『あら、そうだったの？全然気付かなかったわ』

「でしょうね」

『ほら、無駄口叩いてないで課題進めなさいよ。私はもうすぐ終わるわよ』

「えっ！？なんでそんなすらすら進められんの？地頭の違い？」

『きりやんも優秀よ、それは認める。ただ私の方が優れていただけ』

「くそ可愛くないしくそムカつくじゃんお前」

『それはどうもありがとう』


こんな軽口を叩き合っていても彼女は無表情のまま。
言葉に感情を乗せる事は多少出来ても表情筋が動く事はない。

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