◇ ページ6
白濁とした瞳をあちらこちらにきょろきょろと動かし真っ白な顔面に映える赤は口端から耳の上へと裂ける様に伸びおどろおどろしく生気のない肌を彩っている。
肩や首をしきりに痙攣させながら地を這うかの如く掠れた呻き声を上げる様がより一層不気味さを掻き立て、「ギャアアアアア！！！！」という絶叫を上げながら私にひしっとしがみつく大先生をそのままにぞわぞわとゆっくり鳥肌が立った。
なるほど薄気味悪い、ここ最近で一番怖いと思ったかもしれない。
しかし瞬間的に脳内を埋め尽くした恐怖はこれまたすぐに霧散し段々と冷静になってくる。
田中さんだ、間違いない。
施された(或いは自ら施した？)ゾンビメイクも動きもクオリティが高く遊園地のイベントキャストに抜擢されそうな出来映えではあるがラストは田中さんが出てくるんだろうなという思いが頭の片隅にあったばかりに普段の田中さんとあのゾンビメイドを勝手に照合してしまった。
間違いなく田中さんである。
しかし大先生はそれどころではないらしく、私に抱き着いたまま目を瞑り「むりむりむり南無阿弥陀仏悪霊退散イワコデジマ阿毘羅吽欠蘇婆訶」と謎の呪文をずっと唱えている。
いやそっちのがなんなら怖いが？
『大先生、大先生』
「ヒィッ！？えっ？なに？」
『あれ見て』
私がゾンビメイド(今はこの名称を使わせて頂こう)を指差すと小刻みにかたかたと震えながらゆっくりと指の先に視線を移動させる大先生。
かちゃ、と眼鏡を押し上げ目を凝らす様に細めた後、「…あ」と小さく声を漏らした。
私が指を差した先、正確には彼女の腰辺り。
メイド服には凡そ似つかわしくない黒いベルトには蓋のないポケットが付いており、そのポケットにすっぽりとお目当ての真っ赤な林檎が収まっていた。
大先生はちらりと私に視線を寄越し口元をひくひくとひくつかせる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 348人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
える。(プロフ) - フレンチクルーラーさん» コメントありがとうねフレンちゃん！そう言って頂けるとモチベもたかいたかいになっちゃいます、これからもがんばるね！ (2月8日 7時) (
レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
フレンチクルーラー(プロフ) - えるち、楽しいよー。ワクワクしてます (2月6日 19時) (レス) id: c6e205f5c8 (このIDを非表示/違反報告)
える。(プロフ) - 小豆さん» 初めまして、える。と申します。まあ！一気に読んで下さっただなんて！加えて続編まで楽しみにして頂き、作者冥利に尽きます。たくさんありがとうございます！これからもまったりがんばっていきますので、何卒よろしくお願い致します。コメントありがとうございました！ (12月12日 7時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
える。(プロフ) - 名無しの高校生さん» おはようございます、える。です。名無しの高校生様！いつも暖かくて素敵なコメントをありがとうございます！貴女様の言葉に、当方毎度救われております。これからもぼちぼち精進して参りますので、何卒見守って頂けたら幸いです。コメントありがとうございました！ (12月12日 7時) (レス) id: 984bd7bc35 (このIDを非表示/違反報告)
小豆 - 初コメ失礼します！そして、続編おめでとうございます！1〜4をイッキ見して、5がでるのを楽しみにしていました！お体に気をつけて下さい!応援しています! (12月10日 15時) (レス) @page6 id: a88cfbd51d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
