◆ ページ8
「なんで、なんでやっ、おれ、俺の何処がいややったん、?貴女の星になれなかったからですか?どうしようもなく汚い屑だったからですか?貴女は言ってくれたのに、滅びに向かって輝き続けるあの星々よりも貴方はずっと綺麗だよって、愛してるって!俺はずっと、ずっとずっとAだけを愛しとったのに!!…はは、ええわ、ええ。もっかい約束をしよう。貴女は俺の月で、俺は貴女の星。ふふ、お揃いやねって、もっかい愛を確かめ合いましょう?愛してるよ、俺のA」
──たとえば、星屑に踊らされた男
泣きながら安らかに笑った彼は、いつの間にか右手に握られたナイフの切っ先をこちらに向けながら立ち上がりけたたましい笑い声を上げて走り出した。
殺される!と脳は頻りに危険信号を放つのに、強ばった体はぴくりとも動かない。
もうおしまいだと喉が千切れんばかりの悲鳴を上げたその時だった。
「御機嫌よう、可哀想なお嬢さん。楽園パレードにようこそ」
ふっ、と。
一瞬辺りが静まった。
再度がやがやと賑やかなパレードの雑音が鼓膜を撫ぜた時には、自分を刺し殺そうと狂おしく笑っていた男の姿は何処にもなく、代わりに先刻愉快に笛を吹き鳴らし口上を述べていた仮面の男が目の前に立っていた。
息が次第に荒くなり心臓もどくどくと脈打っている。
生きていると実感しながらも死んだ方がどれだけマシかと思えてくる程の恐怖と不安に舌の根まで渇き切り涙すらも引っ込んでしまった。
『これ、は、夢だ……私は悪い夢を見ているんだ……』
「ゆめ、夢か、夢!!!!そうだな、ここは夢だ!辛く悲しいだけの世界から解き放たれ、エリュシオンへと至るべく第四の地平線を目指して行進するパレードの住人に選ばれた憐れな子供達。その子供達に選ばれた君が夢と言うのならば、私も彼らも君の見ている夢そのものだ」
『じゃあ早く私を帰して、家に帰して、こんな悪夢から私を解放してよ…!』
「それは、どだい無理な話や」
「彼らはお前を求め罪を背負い、その代償としてお前を失った。そしてもう一度お前を求めたのだ、それは俺だって同じ事」
「やっと見つけたんや、触れられる距離にいる愛しい人をみすみす逃がしてやれるほど俺は慈悲深くはない。残念ながらな」
92人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ