gr. ページ4
パロ(なんの曲か分かったら私と握手)
パレードの話。
そのパレードは、何処からやってきたのだろうか。
はっ、と気が付いた時に耳に流れ込んできたのは陽気な歌声と踊り出してしまいたくなる様な笛の調べ。
辺りを見渡すと様々な人が一様に並びただひたすらに誘われる様に、まるで世界の果てを目指す様に足を動かし歩いていた。
私も、そんな人々に混ざり同じ様に足を動かしている。
しかし思い出せないのだ、私が何故この得体の知れないパレードに参加しているのか。
何時からこうして歩き続けていたのか。
すると笛の音が止み、目の前の男がばっと振り返ると大袈裟に腕を広げ「おお友よ!」と声を張り上げた。
仮面越しの真紅の瞳は嬉々として輝いておりさらりと流れる様に金髪が揺れる。
表情はよく読み取れないが嬉しそうに、或いは楽しそうに笑っているのだという事がありありと伝わってくる。
仮面の男は沈みゆく夕陽に背を向けて、パレードに参列する人々に届く様に高らかに口上を続けた。
「罪もなき囚人達よ、幸薄き隣人達よ!我らはこの世界という鎖から解き放たれた!来る者は拒まないが、去る者は決して許さない。…黄昏の葬列、或いは仮初めの終焉。楽園パレードにようこそ」
ぞわりと、悪寒が走り全身に鳥肌が立った。
理由は分からない、何もかも分からないままだがこのまま歩き続けてはいけない。
本能が、人間としての本能がそう警鐘を鳴らしている。
男は再度夕陽の方を向くと陽気な笛の音を響かせ、それに合わせてまた陽気で可愛らしい歌声が辺りを包み込む。
よく見ると男の肩に幼い少女がちょこんと座っていた、さっきは気付かなかったのに。
私の意識を覚醒させた歌声も彼女が紡いでいたものなのだろうか、一目顔を見てみたかったという思いが湧き上がったがそれをすぐに振り払い今度は私が夕陽に背を向けて走り出す。
燃える様な赤い髪の女が踊り、気味の悪い首吊り男を象った刺青のピエロが嗤う。
魔性の笛の音に、抗い難い歌声に合わせて。
じわじわと恐怖が侵食していく。
早くここから抜け出さなくては、離れなくては。
そんな私の焦燥を嘲笑うかの様に一人また一人と加わっていきパレードはどんどん賑やかになっていった。
心がばらばらに砕け散ってしまったみたいに、彼らは、彼女達は、皆虚ろな目をして仮面の男の背中を、そして向かうべき世界の果てを見つめている。
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