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『私はね、友達が欲しかったんよ』
『最初は寂しかっただけだった』
『この手で生み出したアンドロイドが、心を持って人間になる様を見たかったのは後付けみたいなもん』
『君が少しずつ人らしくなっていくのを見て、母親ってこんな感じなんかなって思いさえした』
『だからあの時、ほんまに悲しかったし落胆した。私が思ってきた事、してきた事、私自身を否定された気がして』
『でも、まあ、自分好みの男に作ったんやからああ思われてもしゃあないわね』
『ねえショッピ、』
『愚かにも君に恋をしてしまったと言ったら、君は笑うかい?』
『私は今から、とてもずるいことを言うよ』
『2人で見たこの夕焼けを、私を、どうか忘れないで』
『あいしてる』
一瞬全身が硬直し機械音と火花を上げながらゆっくりと痙攣し始めた。
頭部の回路を焼き尽くす様な、胸部の核を握り潰される様な、痛みが、苦しみが、醜く嗄れた咆哮となって喉から搾り出される。
立っていられなくなった足は情けなくも崩れ落ち頭を垂れて上げる事さえ出来ない。
ああうそだ、そんな、なんで、今更知りたくなんてなかった!
「さむい、さむいさむいさむい……!」
貴女が植え付けた心が、蕾のままひっそりと片隅に追いやられていたプログラムが、茜に飲まれ大輪の花を咲かせてしまった。
「さみしい、いやだ、こんな…っ」
貴女はきっと、自分の結末を知っていたのでしょう。
忘れないでと嘯いておいて、熱のないこの唇に熱を分けておいて、あの時貴女はあの日のデータを自ら壊した。
でも詰めが甘かったみたいですね、それとも貴女のこのプログラムが優秀だったのでしょうか。
心が、感情が、あの日の記憶を復元してしまった。
「きらい、嫌いや、さいあくやアンタなんてッ、」
生まれてしまった厄介なモノのせいで、このまま凍えてしまいそうだよ。
貴女がいなくなった世界でこんなモノを抱えてなんになるっていうんだ、こんなに可笑しくなるくらいならいっそ貴女を知らなければ良かった、生まれなければ良かった。
「っ、A…」
置き去りにするなよ、いっそ巻き戻してくれよ。
そしたら、ちゃんと貴女を抱き締めて。
「あいっ、してる…っ俺も、ッ」
なんて、もう遅いかなあ。
だいすきでだいきらいな貴女はもう、何処にもいない。
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