d. ページ14
パロ(なんの曲か分かったら私と握手)
らくえんの話。
誰かの呼ぶ声が聞こえた、少女はそれで目を覚ます。
心地のよい風に抱かれ一面を覆い尽くすスイートアリッサムの花弁達は澄んだ空へと舞い上がる。
上半身を起こした少女は欠伸を一つ漏らすと辺りをきょろきょろと見渡した。
「おはよう、Aちゃん。何かお探しかな?」
声のした方に視線を向けるとサファイアの天使がレンズ越しの瞳を細め緩やかに優しく笑みを浮かべながら首を傾げこちらに手を差し伸べている。
少女がその手を柔く取ると白い花弁を散らせながら天使は彼女を立ち上がらせた。
『だれかがね、ないているの』
少女はぽつりと小さく呟いたが、サファイアの天使は何も言わずただ笑みを浮かべるばかり。
やがて彼女の手をきゅ、と握ると白い絨毯を踏み締めて彼女の手を引きながらゆっくりと歩き出した。
「おはようA!今日はえらいお寝坊さんやったな!」
「お前がなかなか起きてこんから退屈でしゃーなかってん!なあなあ遊ぼうやA!」
エメラルドの天使とトパーズの天使が彼女達の目の前に現れると、至極楽しそうに少女とサファイアの天使をくるくると囲う様に駆け足で回り出した。
しかし少女はその誘いに首を横に振る、その返答に「ええ!?なんで!?」と不満そうな抗議が飛んでくると少女は先程サファイアの天使に伝えた様にぽつりと呟いた。
誰かが泣いているのだと。
『これは、きのせいかしら?』
「せやな、きっと木の精やな!」
『もう!そういうことじゃないわ!』
「じゃあ風の精やろか?」
悪戯にけらけらと笑う意地悪な2人の天使に少しむっ、としてしまった少女であったがすぐに小さく息をつき『おかしいわよね、』と目を伏せた。
『らくえんでなくはずないわ』
「せや、泣くはずあらへん」
『だってらくえんなんだもの』
「楽園なのですから」
ゆっくりと目を開けてみると、今度はルビーの天使とオパールの天使がそこに立っていた。
ルビーの天使は何を言い出しているのだと言わんばかりの呆れを含ませた真顔をしているのに対し、オパールの天使はなんとも慈愛に満ちた穏やかな笑みを浮かべている。
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