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「…は？」
ドアの前でようやく私に顔を見せたショッピだったが、彼は私の腕を強く掴んで家に引き摺り込んだ。
そのまま玄関に倒れ込み、ショッピは私の両手首を頭の上にした。
強く握りしめて拘束される。
いたい。
「なんかあったってなんなん」
「いや、なんなんって…心配してるだけじゃ」
「心配って？俺がこんな醜い姿してるから？なあ、俺の心が狭いから？なあ、なんで？」
訳のわからない御託を並べるショッピは私の知らないショッピに豹変していた。
ショッピは握る力を強くする。
いたい。
「誰も醜いなんて言ってないでしょ」
「顔に出てるんだよ。…ほんまに俺がこうなった理由、わからないん？」
「…ごめん」
「何年も幼馴染やってたのにな」
「…ごめん」
ガラスの破片のように尖った言葉を放つショッピ。
手首を押さえられている私はごめんと謝ることしかできなかった。
はあ、と冷たいため息を吐く。ショッピは澱んだ瞳に涙を溜めた。
「お前は昔っから馬鹿やからな！…ずっと、ずっとずっとずっと！俺を頼って生きていれば良かったんや」
息遣いが荒くなる。
力が強くなる。
瞳を思いっきり開いたせいで瞳孔がゆらゆらと揺らめいている。焦点が定まっていないせいで。彼の瞳に映っていた私はとても醜かった。
「お前には！！！」
「ショッピしかいない」
「！…わかってるやん」
力が緩くなるのを感じた。
私はショッピの大きな手をするりとかわしてやさしく、割れ物を扱うかのように抱きしめた。
「私にはショッピしかいない」
ショッピは私を優しく抱きしめ返す。
「せやな」
短い返事だった。
先ほどまでの荒い息遣いは普段の呼吸を取り戻していた。
チラリと顔を伺ったが、ひどく安心しきった顔をして彼は私を抱きしめていた。
「…馬鹿な男」
本当は彼が誰に思いを馳せ、荒ぶっていたのかわかっていた。
彼は、ショッピは、いつまでも昔の私を想っていたのだ。
一つ、時が流れていくたびに私は大人になっていく。それを恐れていたのだ。
いつまで自分の側にいてくれるのか、彼は怖かったんだろう。
そんなこと、言ってくれれば良かったのに。
「一生私の手の上で踊ってろ」
小さく、誰にも聞こえないよう吐き捨てた言葉は、私の望み通り誰にも聞こえることはなかった。
彼の心地よい体温を感じて私はゆっくりと目を閉じた。
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