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始業式は午前中に終わったというのに、日が傾きかけた頃、私はまだ学校にいた。
理由は未提出の課題を出すため。
普段だったらブッチするんだけど受験生の私はそうもいかなかった。てかまず受験生なら課題全部やろうよ。忘れないでさ。
はぁ、と大きなため息をひとつ。
でもまぁ、早く終わるような楽勝な課題でよかったよね。うん、そういうことにしとこう。
ようやく終わった課題を抱えて、席を立とうとした時、その時。
｢終わった？｣
私の目の前の席に大先生が座っていた。
｢うわぁ！｣
あまりにも幽霊のようにそこにいたもんだから、大きな悲鳴をあげてしまった。
｢僕、ずっとここにおってんけど。気づかんかったん？｣
｢うん、気づかなかった…｣
静かすぎて気味が悪い。ていうかなんでこんな時間までここにいるのか。
｢Aちゃんと喋るの久しぶりやね。｣
｢あ、うん、そ、うだね…｣
優しく微笑む大先生が正直ちょっと怖い。なんで今更になって私に関わってきたのか。
｢あの、私、これ出さなきゃ行けないから、またね。｣
｢待ってや。｣
その言葉と共に彼は私の手首をしっかり掴んだ。紺色のカーディガンの裾からは痛々しい切り傷が覗いていた。
｢なんで？僕との約束忘れたん？｣
｢なに？そんなのあった？怖いんだけど。｣
｢…覚えてへんの？｣
藍色の瞳が私を真っ直ぐ見つめる。
そんなこと言ったって覚えてないものは覚えてないし、会話するのも小学生ぶりとかそのくらい。
｢僕な、その約束のためにずっとAちゃんと同じ学校にしたんやで。｣
にっこり笑うその笑顔が怖い。確かに、彼はいつも私と同じ進路。たまたまかと思っていたけど合わせてきていたのか。気味が悪い。
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