生まれ変わったら恋にしようか/gttb ページ13
極たまに、ずっと繋いでいる彼の手を離してしまったらどうなるんだろうと考えるときがある。いつも私の前を歩いて導いてくれる彼がいきなり手を離されたとき、どんな顔をして私の方を向くのかと。
「……ねぇぐっち」
「なに」
「ぐっちはさ、私のことどこまで許してくれる？」
世界が明日になれば日常の中に小さく折りたたまれて仕舞われてしまうような、そんないつもと変わらない冬の放課後の帰り道。ふとした世間話の切れ目に、いつもと変わらず道路側を歩いてくれる幼馴染を見上げて私はそう言った。
いきなり抽象的な問いを向けられた可哀想な幼馴染――もといぐっちは、一度心底意味が分からないと言いたげに顔を歪めて「はぁ？」と首を傾げる。でもすぐにいつもと同じ勝ち気な笑みを浮かべて「んなん決まってんだろ」と言い放った。
「全部許すって。人殺すとか、そういう非人道的なことさえしなけりゃあ俺はお前を許すよ」
不思議と、その言葉に驚きはやってこない。それでもその言葉の中に含まれた毒のような呪いのような何かに怯え、一瞬だけ止まってしまった呼吸を再開させながら私は小さく笑う。
「……なんかすごいね」
愛が、とまでは流石に口走れなかったけれど、ぐっちはその察しの良さで私の言わんとしていることを汲み取ったのだろう。少し照れくさそうに笑って、まるで話題を逸らすかのようにAはどうなの、と聞いてきた。
「私？」
「うん。俺のこと、どこまで許せる？」
「うーん」
自分でこの話題を生み出したくせにいざ問い掛けられると分からなくて、私は妙なほど色の濃い青空を見上げながら考える。ぐっちの、ぐちつぼのことを、私はどこまで許せるか。幼少期からの記憶を一通りなぞって、私と私以外とで笑ってしまいそうなほど分かりやすく変わる彼の表情を思い出して、私はもう一度うーんと首を傾げた。
「私の嫌なことさえしなかったら、許せるかな」
「ほう」
大きく相槌を打ったぐっちは、ちらりと私の方を見て「例えば？」と問いかける。私は少し顔を上げて彼と目を合わせ、そんなことを聞いてくる割には全部見透かしていそうな顔で笑うなぁ、と思った。
「……私を裏切る、とか」
「もっと具体的に言うと？」
「…………わかってるくせに」
「いいや？ 流石の俺でも言ってくれないと分からんよ」
「ぐっちのそういうとこ本当ムカつく」
「そんなぁ」
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