濡れた瞳に愛を/twhs ページ3
(ナチュラルに同棲してます)
「………ぐすっ」
「なぁに、どったの、今日は」
風呂上がり、リビングへ向かうと真っ先に目に入ってきたのは、ソファの前でクッションを抱き、それを胸に押し付けるようにして体育座りをしている愛しの彼女、Aだった。
随分泣いてしまったのだろう、抱えられたクッションが雨に降られたように濡れていた。
普段は強気で勝気な彼女だが、その反面どうもメンタルが弱いらしく、ちょっとしたことですぐ「病み期」「死にたい」が出てしまうような繊細な子なのだ。元々俺は鋼のメンタルの持ち主だったので彼女の気持ちをわかってやれる自信がない。だが、こうなってしまったAをたくさん甘やかすのが彼氏であるつわはす様の役割なのだ。この役目を一生誰かに譲るつもりはない。
Aの元へ向かうと、彼女の白い肌に赤くなった目元が目立っていた。その瞳は遠慮がちに俺と目を合わせたあと、伏し目がちに目を逸らした。彼女は自分の弱さを隠したがる。俺の前では隠さなくていいのに。つーか隠さないで?
「A」
彼女の隣に座り、先程の問の答えを急かすと、その小さな唇が控えめに開いた。
「…会社で、」
「うん」
「発注、失敗、しちゃって、」
「うん」
「みんなに、迷惑かけちゃって、」
「そっかそっか」
途切れ途切れに言葉を紡ぐAは
「ほら、おいで」
両手を広げて呼んでやると、律儀にソファの上にクッションを戻しながら俺の腕の中へやってきた。ただでさえ小さな彼女が縮こまると本当に消えてしまいそうで、たまに俺が不安になる。
「よーしよしよし、Aは頑張ってるね」
「……うう〜、はすくん〜〜……」
ふわふわの猫毛を撫でてやると、Aは声を上げて泣き出した。今日もこのまま泣き疲れて寝てしまって、俺が寝室まで運んでやる、といういつものやつが起きそうだ。
かわいいかわいい彼女は目一杯愛でるのがセオリー。そうだろ?
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:梦 | 作成日時:2022年8月13日 0時