【短編集】君の瞳に恋してる！【ky,rtrt,uszw】 (ページ1)

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君の瞳に恋してる！/ rtrt ページ1

昔から他人(ひと)の目を見て話す、というのが苦手だった。相手の目を見てしまうとどうも緊張してしまって思うように話せなかったり、それまで考えていたことや覚えていたことをすっかり忘れてしまうのだ。

……なぜそんな自ら「僕はコミュ障です」と自己紹介をしているかのような過去の話をしているのかというと。

「ん〜、でもやっぱイエベかなぁ？よーく見たら茶色っぽい気が……あ、ちょっと！目閉じないでよ！！」

リビングルームのソファに座った俺の太ももの上に腰を下ろして対面しているのは数年前から同棲を始めた彼女のA。最近巷では「パーソナルカラー」なるものが流行しているのだそうで、随分前からうーんうーんと唸りながら俺の瞳やら髪やら血管やらの色をチェックしている。

「なーまだわからんの？レトルトさんそろそろ足痺れてきたよ？」

「だって、レトさんすーぐ目閉じちゃうんだもん」

「別に目の色だけじゃなくても判断はできるんやろ？ほら、さっき見てた血管の色？とか」

「血管は血管で細すぎて何色なんだかサッパリなの！！」

「え〜？…」

〜だもん、やら、〜なの、やらさっきから随分かわいらしい語尾がつく。それくらい必死になって診断しようとしてくれているのだろうか。第一、俺のパーソナルカラーがわかったとして何の役にも立たないような気がするが、それを口に出すとかわいい彼女の機嫌を損ねるので口が裂けても言わないように気をつける。

「ちなみに、Aのパーソナルカラーはなんなん？」

「私多分イエベ春なんだよねー、ブルベがよかった」

「これがいい〜とかあるんや」

「まあね、似合うリップとか変わってくるし」

リップ、という単語につられて視線が彼女の唇へと動く。彼女の控えめで柔らかそうな唇は、昨日と同じく桜色で彩られていた。これが赤でもなんでもきっと似合うと思うのは親バカならぬ彼女バカなのだろうか。