もし君がいないなら（Kr哀話） ページ19
きりやんのおかげで繁栄している村に町からの使者が来ていた。
小さな村が発展するのには、訳があると騒ぎ立てている。
話を聞くと、町の方でも疫病が蔓延し、天皇も危ない状態らしい。
何かあるのなら町へ来い、とのことだ。
「絶対嘘だろ」
「本当の話だとしたら助けないと、きりやんのお酒で治るかもしれないでしょ」
「んー、でもなぁ……」
どこか歯切れの悪いきりやんを不思議に思う。
困ってる人がいたら、真っ先に助けに向かうのがAの知っているきりやんだったからだ。
「じゃあ、私が町に行って本当のことか確かめに行くよ。ついでにお酒も持っていくし」
「いや、そういう事じゃないんですよ、Aさん」
やや呆れ気味に言葉を告げるきりやんは、ずっと悩んでいた。
そんなある日のこと、痺れを切らしたのか町の兵が攻めてきた。
「やっぱり嘘じゃねぇか」と、きりやんが悪態をついている。
容赦なく攻めてくる兵に、村人はなすすべも無く倒れていく。
兵の1人がAに切りかかろうとした時だった。
バタバタと兵も村人も倒れていく。
「誰の許可を得てこんなことしてる訳？ 俺だって平和に過ごしたかっただけなんだよな」
空気が重くなるのを感じる。
苦しみながら絶えていく兵と村人、倒れていく姿にAは疫病だとすぐに分かった。
次々と人が倒れていく景色をAは、ただ見ていた。
「あなたは、誰？」
きりやんの見た目をした悪い鬼だとAは思った。
どうせ殺されるくらいなら、とAは近くの兵が落としていた槍を持った。
突き刺さった槍は、深く地面に刺さった。
このまま地面が裂けて、全てを飲み込んで隠してくれればいいのに……。
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作者名：ミカ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/elyseeskei1/
作成日時：2022年8月19日 18時
