四十五歩目。 ページ46
―Aside―
「やっと尋ねてくださいましたね」
『え？』
「Aは強いじゃん？強い人ってさ、何でも自分でできるから頼るってことを知らないと思うんだよね。まぁ、付き合いが短いから仕方ないところもあるんだろうけどね」
『頼る...』
嬉しそうな百ちゃんと苦笑いしてる響香ちゃん。
なんだか空気が軽くなった気がする。みんなももう泣いてなくて笑ってくれてる。
梅雨ちゃんの赤くなった目元が痛そうで悲しくなった。
申し訳なくてほっぺに残った涙の痕をなぞるようになでた。
「ふふ、くすぐったいわ」
『泣かせちゃってごめんね』
「いいのよ。私、Aちゃんのこういうところが好きだわ。ちゃんと目を合わせて話を聞いてくれる。当たり前のようだけれど案外難しいことなのよ」
『そうかな...』
「落ち着いてきたところで私もAちゃんにありがとうって言わせて！」
『私、透ちゃんに何かしたっけ』
「ＵＳＪで黒霧にワープされそうになったとき手握ってくれたでしょ！おかげで飛ばされずにすんだ！ありがと！！」
「僕も助けてもらったからね、お礼を言わせて。サンキュー遮止さん☆」
あぁ、そうだ。あの時とっさに近くに居た二人の手を掴んだんだった。
透ちゃんとビームくんだったのか。
そっか、私ちゃんと助けられてたんだ。
全員じゃないし怪我させちゃった人もいるけど、守れてる人もちゃんといた。
「話はまとまったな。ほら遮止、友達が待ってるんだろ。もう帰っていいよ」
『相澤先生、いたんですね』
「お前ね...」
「ええー！！もうちょっとダメですか！？やっとAちゃんと会えたのに！！」
「お前らも体育祭で疲れてるだろ。話す機会はいくらでもあるよ、合理的にいこう」
本音を言うなら私ももう少しだけみんなとお話ししたかったけど、心操くんを待たせてる方がいやだから帰ることにした。
全員と会話したわけじゃないけど、みんな気に掛けてくれてたのは分かったからお礼を言って教室を出た。
――――――――――――――――――――
『心操くん、お待たせ！』
「...Ａ組で何かあった？」
『あ〜、やっぱり分かっちゃうか。...前に心操くんが教えてくれた"普通じゃない"の、やっと気付いたよ。まだ理解できてないけど、友達を泣かせるのはもういやだから。気を付ける』
「ゆっくりでいいから、俺はAに自分を大事にして欲しいよ。...ヒーロー、今も嫌いか？」
『...分かんない』
「そっか。帰ろう、A」
『うん』
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年1月21日 1時
