四十歩目。 ページ41
―Aside―
思いを叫ぶ心操くんの声に泣きそうになる。
ただ、必死なんだ。
憧れを、夢を夢で終わらせないために。ここにいるみんなそうなんだ。
頑張ってる。全員が、全力で戦ってる。心操くんも、緑くんも。
ここはヒーローを目指す子たちが集まるところだから。
《心操くん、場外！緑谷くん二回戦進出！！》
一回戦が終わって、心操くんが戻ってくる。
ホントは下で待ちたかったけど、Ｃ組のみんながいるから。今はここにいたい。
みんなの声を心操くんにちゃんと聞いて欲しいから。
「かっこよかったぞ、心操！！」
「おつ〜！」
「正直ビビったよ！」
「俺ら普通科の星だな！」
「障害物競走１位のやつといい勝負してんじゃねぇよ！」
「それによ...」
「あの個性、対ヴィランに関しちゃかなり有効だぜ。欲しいな」
「雄英もバカだなぁ、あれ普通科か？」
「まぁ、受験人数半端ないから仕方ない部分はあるけどな」
「戦闘経験の差はな、どうしても出ちまうからな。もったいねぇ」
「聞こえるか？心操！お前すごいぞ！」
良かった、本当に良かった。
みんな分かってくれてる。心操くんの強さも、すごさも。
プロヒーローの言葉はきっと何よりも心操くんに自信を持たせてくれる。
クラスメイトの言葉が心操くんの支えになってくれる。
うれしい。すごくうれしい。どうしたらいいかな、どう言ったら、心操くんにも伝わるかな。
伝えたい、この気持ちを心操くんにも。
言葉じゃ足りない。
『心操くん！！』
「っ！？おい、腕！」
『だいじょーぶ！これもう治ってるから！そんなことより！』
「そんなことじゃないだろ...一旦離れて、顔見たい」
『ん、』
うれしさのあまり抱きついてしまった。ちゃんと支えてくれるあたりが優しいよね。
腕の包帯はカモフラージュで骨折はもう完治してる。
離れても落ち着けなくて、心操くんの両手をぎゅっと握った。
『心操くんおつかれさま！みんなの声、聞こえた？すごいよ、プロヒーローが心操くんのこと褒めてたんだよ！Ｃ組の子たちもずっとすごいって、かっこいいって！』
「うん、ちゃんと聞こえた。嬉しいよ。諦めなくて良かったって本気で思う。Aのおかげだ」
『え、え？なんで私？ちがうよ、心操くんが諦めずにがんばったからだよ。環境が変わったのもあるかもだけど、それは心操くんがここにいることを選んだからだよ。私は何も、』
「A」
心操くんの咎めるような声に口を閉じた。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年1月21日 1時
