十二歩目。 ページ13
―Aside―
「やっと来た」
『思ったより時間かかっちゃった。こんな入学式初めてだよ』
「何したの？」
『個性ありの体力テスト』
「？ Aは"個性"関係ないだろ」
『そーなんだよね、結局個性使ってないよ。あ、でも初めてボール投げで投げずに蹴っ飛ばした。１００ｍ越えたよ。ビックリ』
「...お前実はゴ」
『うち出禁にするよ？？』
「ゴメンナサイ」
心操くんって意外とボケるんだよな。ボケてんのかな、これ。ノリは結構いい方。
ふざけながらも今日会ったことを話しながら帰る。
入学式に参加しなかったのＡ組だけらしいし。なんで初日から体育してんだろ。
校長先生見たかった...もふもふ...。お願いしたら触らせてくれたりしないかな。ダメかな。
Ｃ組の子たちとも話したかったな。こういうのって最初が肝心だっていうのに。
心操くんといる時間もなくなるし。私が妥協したのって心操くんが理由なのにな、これは訴えていいやつ？
公安相手ならもみ消されるのが落ちかなぁ...後ろ盾もないし。自己犠牲での脅しならできるけど。
Ａ組も良い子ばっかなんだけど、ヒーロー科だし当然っちゃ当然。
仲良くするかはまた違う話な訳で。やっぱり、場違いなんだよなぁ。
あー...なんだかなぁ、やな感じ。
「A」
『んー？』
「右左、どっちがいい？」
呼ばれて立ち止まれば、握った両手を差し出された。
私より一回りは大きい、でも細長いきれいな手。男女でこんなに違うから人間って不思議。
お菓子だろーな、心操くんいつも何かしら持ち歩いてるから。
『どっちも...』
「ふっ、欲張りだな」
あ、レアな表情だ。目を細めて満足そうに笑うの、外じゃあんまり見ないから、レア。
ほら、って心操くんがくれたのはチロルチョコとコインチョコ。
ダブルチョコだね。好きだよ。お菓子はなんでも好き。
頑張ったご褒美にも、癒しにもなるから。心操くんと出会ってからは賄賂にもなったけど。
好きな人に好きなものもらえるのって幸せだよね。
『ありがと。今日来る？』
「行く。その前に買い物な、どうせ何もないだろ」
『いえす。あ、卵と食パンはあるよ。卵割って焼くだけ簡単でおいしい』
「偏食すぎる。俺も手伝うからもっとバランス良い料理作れるようになれよ」
『あは、ママだ〜！』
「お菓子買わないからな」
『ゴメンナサイ！！お菓子抜きは勘弁してください！！ししゃもとお昼寝していいから！！』
「必死か」
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年1月21日 1時
